ルアーロックシリンジとは
ルアーロックシリンジとは、シリンジのうちシリンジ先端部にロック機能が付いているものです。
通常のルアーチップ式のシリンジと異なり、針の脱落を防ぐことができるため、特にしっかりと注射針を接続したい場合に適したシリンジと言えます。通常のシリンジと同様に、医療用や実験用などの分類があり、様々な場面で汎用されます。
ルアーロックシリンジの使用用途
ルアーロックシリンジの用途は、通常のシリンジと同様に医療用と実験用の2種類に大別されます。
1. 医療用シリンジ
医療用では、通常の注射薬の他、口腔内洗浄、造影剤などに用いられています。特に、シリンジポンプを用いて注射薬を持続注入するような場合や、抗がん剤などを取り扱う際などでの利用が多いです。抗がん剤などは刺激の強い薬液であり、取り扱いの際に針やカテーテルが脱落すると危険です。
また、シリンジポンプは内圧が上昇しやすいため、一般的な注入よりも針が脱落しやすいと考えられます。ルアーロックシリンジは、このような場合で危険回避のために用いられます。
医療用では、滅菌して個別包装されたディスポーザブル (使い捨て) 式 の製品が主流です。一方、プラスチック製のシリンジでは薬物吸着や樹脂添加剤の流出等の懸念がある場合には、ガラス製のシリンジが用いられます。医療用のガラス製シリンジは、使用するたびに滅菌して再利用されます。
2. 実験用シリンジ
医療現場以外にも、物理・化学・生命科学分野における実験器具として用いられます。主な用途は、液体や気体の注入、体積の測定、加圧・減圧、滴下、分注などです。
ルアーロックシリンジの原理
最も一般的な形状であるルアーチップ式のシリンジでは、針取り付け部分のテーパーを利用し、針を押し込んで固定します。針の着脱が容易である一方、針が脱落しやすいことが欠点です。
一方、ルアーロックシリンジは、針が抜け落ちないようシリンジの先端がネジ状になっています。そのため、針が抜け落ちないようにロック機構で固定することが可能です。ロック機構はプラスチックシリンジではプラスチックとなっており、ガラスシリンジではガラスの他、樹脂と金属を組み合わせた構造をしているものもあります。
ルアーロックシリンジの種類
1. 用途・材質による分類
ルアーロックシリンジには、用途に合わせて医療用や実験用などがあります。また、ガラスシリンジのうち、特にガスの取り扱いも可能となっている気密性を有したシリンジは、ガスタイトシリンジと呼ばれる製品です。
ルアーロック式のシリンジにも、他のシリンジと同様にディスポーザブルのプラスチック製 (ポリプロピレン) のものや、ガラス製 (ホウケイ酸ガラス) など、材質にはいくつかの種類があります。使用する薬剤等に合わせて選択することが必要です。
2. 容量による分類
ルアーロックシリンジは、様々な種類の容量のものが販売されています。医療用では、1mL、2mL、3mL、5mLなどの小容量から、10mL、20mL、30mL、50mL、100mLなどの中〜大容量まで幅広い製品展開です。
研究開発用では、50μL、100μL、250μL、500μLなど、更に小容量のガラスシリンジ製品などもあります。最大容量が異なると、目盛りや最小容量も異なるため、適したものを選択することが必要です。
3. その他
ルアーロックシリンジの中には、洗浄して繰り返し使用するものと、最初から使い捨てが想定されているディスポーザブル式のものなどがあります。医療用では滅菌して個別包装されたディスポーザブル式が主流です。ディスポーザブル式は、医療現場における感染予防、および、化学実験等におけるコンタミ防止で使用されます。
通常のシリンジの他、プランジャーが吸入全量を強制排出するゼロデッドボリューム型などもあります。注射薬を予め充填して製剤として販売する、プレフィルドシリンジにもルアーロック機構が使用されています。