ボールエンドミル

ボールエンドミルとは

ボールエンドミル

ボールエンドミルとは、工作機械で使用される切削工具であるエンドミルのうち、先端の形状が球状のエンドミルのことです。

通常のエンドミルは形状が平坦であるため、切削面の断面形状が直角になるのに対して、ボールエンドミルで切削加工した場合には断面形状を曲面にできます。

ボールエンドミルを使用することで、切削工具を傾ける機構を有する5軸の加工機械などを使用せず、ボールエンドミルの球半径以上の曲率半径であれば曲面を自在に成形することが可能となります。

ボールエンドミルの使用用途

ボールエンドミルは曲面形状を成形する切削加工に適しているため、底面の角部に部品やゴミが貯まらないようにするためにフィレット部を設ける場合や、液体の流路としてのかまぼこ状の溝を切削したい場合などに使用されます。

また、CADソフトで設計した形状に基づきNCフライス盤などで数値制御を行いながら切削加工をすることで、ボールエンドミルの球半径以上の曲率半径であれば、一般的なスクエアエンドミルでは難しい滑らかな曲面を成形することができます。

ボールエンドミルの原理

ボールエンドミルは、NC工作機械と併用することで曲面形状を容易に切削することが可能です。しかし、スクエアエンドミルと比較して欠点もいくつか存在します。

ボールエンドミルは刃先の断面積が小さいため剛性が低く、刃こぼれが生じやすいのが特徴です。ボールエンドミルの刃の断面は曲面で、工具径は被切削部材との接触位置により大きく変わります。送り速度や回転数を一定に設定していても、被切削部材表面の水平度や表面粗さによって、過度な負荷がエンドミル先端に加えられることで刃こぼれします。

その他、底面の角部の直角加工ができない、切削くずの排出性が悪いといった欠点もあり、汎用的なエンドミルとしてはスクエアエンドミルに軍配が上がります。また、被切削部材との接触位置により加工面の品質も大きく異なるため、滑らかな曲面を成形したい場合には高精度の位置決め精度をもった加工機械の使用や加工後の表面処理が必要です。

ボールエンドミルのその他情報

1. ボールエンドミルの使い方

刃先が丸いボールのような形状になっていることから、平面や側面だけでなく、球面といったあらゆる形状を削ったり、エンドミルの半径分を使ったコーナーR付け加工に使います。球面になっている特性上、刃の先端から外側にかけて徐々に工具径が大きくなり、回転速度も変わってきます。

先端の工具径は0なので、どれだけ高速回転させても回転速度は0のままです。そのため、回転が0になる先端部分だけでの加工は面が汚い、刃こぼれするなど、カッターにもワークにもあまり良い結果は出ません。ボールエンドミルを用いて良好な加工結果を出すには、できるだけ刃面の外側をなるべく使うようにし、回転数の速い場所でワークに接触させることが大切です。

テーブルや主軸の角度を自在に変更できる5軸加工機では、エンドミルもしくはテーブルを任意の角度に傾けて良好な精度を得られるように削っていくことができます。ボールエンドミルで平らな面を加工することは不可能ではありません。フライスカッターに比べて時間は掛かりますが、ボールの直径から半分だけ(20mmなら10mm) ずらし、平面を塗りつぶすように加工することで、平面の加工が可能になります。

この場合、表面は凸凹が目立って綺麗ではありません。あくまでも荒削り用途に限定されますが、ボールエンドミル1つで複雑な面形状から平面加工に側面加工まで万能に対応できます。

2. チップ式のボールエンドミル

エンドミルの直径が20mmよりも大きい大径のボールエンドミルでは、ソリッドタイプの他、2枚の刃 (チップ) が取り外し可能な交換式になっている種類があります。チップ交換式だと、ソリッドのように再研磨して再び使用することができません。

しかし、切れ味が悪くなれば交換するだけで済むため、簡単で刃物交換の時間も短縮できます。チップの種類によって荒削り用と仕上げ用があり、荒削り用の場合は1枚のチップが上下で対称な形をしています。

使い終わったらチップをひっくり返して装着すれば、1枚のチップで2回分の加工が可能な場合が多いです。仕上げ用のボールは、半月のような形状の1枚チップとなっていて、荒用のように刃を組み替えて再加工することはできません。

3. ボールエンドミルと併用される機械

ボールエンドミルを併用する機械には、主に3軸CNCルータ、4軸CNCルータ、5軸CNCルータがあります。それぞれのCNCルータでは、CAD/CAMソフトウェアで作成した3Dデータを読み込んで、ボールエンドミルを使って加工を行います。

加工精度は、ボールエンドミルの刃先の半径や回転数、進行速度などによって調整が可能です。また、最近では高速加工に特化した高速切削機能を搭載した機械も登場しています。

3軸CNCルータ
3軸CNCルータは、X軸、Y軸、Z軸の3軸によって制御され、平面加工や浅い溝加工に適しています。

4軸CNCルータ
4軸CNCルータは、X軸、Y軸、Z軸に加えて回転軸を持ち、回転しながら加工できるため、立体加工や彫刻加工に適しています。

5軸CNCルータ
5軸CNCルータは、4軸CNCルータに加えて傾斜軸を持ち、より複雑な形状の加工が可能です。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/012/
https://www.osg.co.jp/products/endmill/
https://www.dijet.co.jp/product/new_product/2018.html

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