硫酸水素カリウムとは
硫酸水素カリウム (英: Potassium hydrogen sulfate) とは、カリウムの硫酸水素塩であり、無臭で無色あるいは白色の結晶です。
化学式はKHSO4で表され、分子量は136.17、CAS登録番号は7646-93-7です。別名として、酸性硫酸カリウム (英: Sulfuric acid hydrogen potassium salt) や重硫酸カリウムがあります。
硫酸水素カリウムは、天然にはマーカライト (英: Mercallite) という無色または空色の斜方晶系鉱物として、鍾乳石などの成分に含まれることがあります。ミセナイト (英: Misenite) という鉱物には、K8H6(SO4)7というより複雑な組成で硫酸水素カリウムが含まれています。
硫酸水素カリウムの使用用途
硫酸水素カリウムの主な使用用途として、鉱物や難溶性塩の分析用融剤、白金器具の洗浄が挙げられます。これらの用途は、本物質を含む硫酸水素塩が難溶性塩と溶融すると可溶性硫酸塩を生じる性質を利用したものです。この現象あるいは分析手法を、硫酸水素塩融解といいます。
また、硫酸水素カリウムは、ワイン製造用の酒石酸カリウムを調製するためにも使用されます。そのほか、強力な酸化剤である過硫酸カリウムの調製に使用されたり、肥料や食品保存剤にも有用です。
硫酸水素カリウムの性質
硫酸水素カリウムの融点は197℃、沸点は無く300℃付近で分解し、密度は2.24g/cm3です。硫酸水素カリウムは、水への溶解度が50g/100mLと溶けやすく、水溶液は強酸性を示しますが、エタノール中では分解します。
硫酸水素カリウムの水溶液からは含水塩が得られ、結晶水は1または5.5だとされています。無水硫酸水素カリウムの結晶構造は、斜方晶系または単斜方系の無色の結晶です。
硫酸水素カリウムのその他情報
1. 硫酸水素カリウムの製法
硫酸水素カリウムは実験室的には、硫酸カリウムと硫酸を反応させることで得られます
K2SO4 + H2SO4 → 2KHSO4
硫酸水素カリウムは、硝石 (硝酸カリウム) と硫酸から硝酸を製造する際の副産物としても得られます。
KNO3 + H2SO4 → HNO3 + KHSO4
工業的には、硫酸水素カリウムは、硫酸カリウムを製造するためのマンハイム法の初期段階に関連して、塩化カリウムと硫酸の発熱反応時に得られます。
KCl + H2SO4 → HCl+KHSO4
2. 硫酸水素カリウムの反応
硫酸水素カリウムは、熱分解によって脱水してピロ硫酸カリウム (二硫酸カリウム) を生成します。
2KHSO4 → K2S2O7 + H2O
さらに、600°C以上ではピロ硫酸カリウムは硫酸カリウムと三酸化硫黄に変化します。この性質を利用し、難溶性塩の硫酸水素塩融解に使用されます。
K2S2O7 → K2SO4 + SO3
3. 法規情報
硫酸水素カリウムは、毒物及び劇物取締法、消防法、化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) など、主要な法規制のいずれにも該当していません。一方で、船舶安全法や航空法など輸送に関する法律では腐食性物質に指定されているため、注意が必要です。
4. 取扱いおよび保管上の注意
取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。
- 容器を密栓し、直射日光を避け冷暗所に保管する。
- 金属を侵すため、ガラス製やプラスチック製容器などで保管する。
- 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
- 加熱すると分解して有毒なヒュームを発生するため、取扱時には注意する。
- アルコールや水と反応するため、むやみに混合時させないようにする。
- 多くの金属を侵し、引火性・爆発性の水素を発生するため、混触させないように注意する。
- 使用時は保護手袋、保護眼鏡、保護衣を着用する。
- 取扱い後はよく手を洗浄する。
- 皮膚に付着した場合は、石鹸と水で洗い流す。
- 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗う。
参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7646-93-7.html