硫酸水素ナトリウム

硫酸水素ナトリウムとは

硫酸水素ナトリウム (英: Sodium hydrogen sulfate) とは、ナトリウムイオンと硫酸水素イオンとの塩であり、白色の結晶です。

化学式はNaHSO4で表され、分子量は120.06、CAS登録番号は7681-38-1です。別名としては、酸性硫酸ナトリウム (英: Sulfuric acid hydrogen sodium salt) があります。

硫酸水素ナトリウムの使用用途

硫酸水素ナトリウムの主な使用用途として、鉱物や難溶性塩の分析用融剤、白金器具の洗浄が挙げられます。これらの用途は、本物質を含む硫酸水素塩が難溶性塩と溶融すると可溶性の硫酸塩を生じる性質を利用したものです。この現象あるいは分析手法を、硫酸水素塩融解といいます。

また、硫酸水素ナトリウムは食品添加物としても利用されています。パンケーキミックスや飲料、ドレッシング、ソースなどへの添加物をはじめ、食肉の加工や新鮮なカット農産物の褐変防止にも使用されています。硫酸水素ナトリウムは酸味を作らずにpHを下げることができるので、市販されているクエン酸、リンゴ酸、またはリン酸の代わりに使用されており、褐変防止剤としても使用可能です。

そのほか、金属の表面処理剤、にかわの処理剤、水の消毒剤、pH調整剤、せっけん、れんがやセメント・製紙業の分野も用途として挙げられます。

硫酸水素ナトリウムの性質

硫酸水素ナトリウムの沸点・融点は無く、315℃付近でNa2S2O7に分解します。密度は2.74g/cm3で、安定な酸性塩であり、無水物には吸湿性があります。硫酸水素ナトリウムの水への溶解度は50g/100mLと溶けやすく、水溶液は強い酸性を示します。

硫酸水素ナトリウムは、一部の棘皮動物には猛毒となりますが、他の生物に対してはほぼ無害です。このため、硫酸水素ナトリウムをオニヒトデの大発生の抑制に用いることがあります。

硫酸水素ナトリウムのその他情報

1. 硫酸水素ナトリウムの製法

硫酸水素ナトリウムの無水物は、塩化ナトリウムに濃硫酸を加え、加熱融解することで得られます。

   NaOH + H2SO4 → NaHSO4 + H2O

硫酸ナトリウム水溶液に濃硫酸を作用させると、硫酸水素一水和物が得られます。

   Na2SO4 + 2H2O + H2SO4 → 2NaHSO4·H2O

工業的には、硫酸水素ナトリウムは、塩化ナトリウムと硫酸の反応を伴うマンハイム法の中間体として生成されます。

   NaCl + H2SO4 → HCl + NaHSO4

2. 硫酸水素ナトリウムの反応

硫酸水素ナトリウムは、300℃以上に加熱すると、脱水してピロ硫酸ナトリウム (二硫酸ナトリウム) を生じ、さらに加熱するとSO3を放出して硫酸ナトリウムを生じます。

   2NaHSO4 → Na2S2O7 + H2O
   Na2S2O7 → Na2SO4 + SO3

3. 法規情報

硫酸水素ナトリウムは、消防法や毒物及び劇物取締法、化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) などの、主要な法規制のいずれにも該当していません。一方で、航空法や港則法などの輸送に関する法律では腐食性物質に指定されているため、注意が必要です。

4. 取扱いおよび保管上の注意

取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 容器を密栓し、直射日光を避け冷暗所に保管する。
  • 金属を侵すため、ガラス製やプラスチック製容器などで保管する。
  • 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
  • 加熱すると分解して有毒なヒュームを発生するため、取扱時には注意する。
  • アルコールや水と反応するため、むやみに混合時させないようにする。
  • 多くの金属を侵し、引火性・爆発性の水素を発生するため、混触させないように注意する。
  • 使用時は保護手袋、保護眼鏡、保護衣を着用する。
  • 取扱い後はよく手を洗浄する。
  • 皮膚に付着した場合は、石鹸と水で洗い流す。
  • 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗う。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7681-38-1.html

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