硫酸ジメチル

硫酸ジメチルとは

硫酸ジメチルの基本情報

図1. 硫酸ジメチルの基本情報

硫酸ジメチルとは、硫酸のジメチルエステルです。

別称に、ジメチル硫酸、硫酸メチル、ジメチル硫酸エステル、DMSなどがあります。ジメチル硫酸は厳密には慣用名です。

化学物質審査規制法(化審法)では、優先評価化学物質に分類されています。水質汚濁防止法では事故時措置(指定物質)の規制項目があるほか、労働安全衛生法、毒劇法、消防法でも規制項目があります。

硫酸ジメチルの使用用途

硫酸ジメチルは強力なアルキル化剤として広く用いられています。そのため、医薬品原料や合成原料としての用途が多いです。具体的には、フェノールやアルコールのヒドロキシ基 (-OH) 、アミンのアミノ基 (-NH2) 、チオールのチオール基 (-SH) のメチル化によく用いられます。

核酸の化学的メチル化に用いられるアルキル化剤としても有名です。歴史的に、マクサム・ギルバート法 (英: Maxam–Gilbert sequencing) によるDNA塩基配列の決定に使用されました。

硫酸ジメチルの性質

硫酸ジメチルの融点は−32°Cで、188°Cで分解します。タマネギのような弱い悪臭を有し、無色の油状液体です。エタノール、アセトン、ジクロロメタン、各種エーテル類に溶けます。水には溶けにくく、徐々に加水分解されます。

硫酸ジメチルには刺激性がないですが、人体にきわめて有毒です。蒸気を吸入したり、皮膚に付着したまま放置すると、体内に吸収されて中毒を起こします。腎臓、肝臓、心臓が侵され、皮膚の壊死や呼吸器粘膜の炎症から死に至る可能性もあるため、取り扱いには十分な注意が必要です。

硫酸ジメチルの構造

硫酸ジメチルは中性エステルであり、化学式は(CH3)2SO4または(CH3O)2SO2で表されます。Me2SO4とも表記されます。モル質量は126.13g/molで、密度は1.33g/mlです。

硫酸ジメチルのその他情報

1. 硫酸ジメチルの合成法

硫酸ジメチルの合成

図2. 硫酸ジメチルの合成

発煙硫酸と乾いたメタノールジメチルエーテルと反応させると、硫酸水素メチルが生成します。硫酸水素メチルを蒸留し、硫酸ジメチルに変換可能です。

クロロスルホン酸メチルと亜硝酸メチルを反応させても、硫酸水素メチルを合成可能です。

工業的にはジメチルエーテルと三酸化硫黄 (SO3) との連続反応によって合成されます。

2. 硫酸ジメチルの反応

硫酸ジメチルの反応

図3. 硫酸ジメチルの反応

一般的に硫酸ジメチルは、フェノール類をメチル化する際に使用され、アルコールのメチル化にも適しています。例えば、tert-ブタノールからtert-ブチルメチルエーテルを合成可能です。アルコキシドの場合には、すぐにメチル化します。アルコールと同様に、チオールのメチル化も容易に起こります。チオカルボン酸からチオエステルを生成可能です。

アミンのメチル化によって、3級アミンや4級アンモニウム塩を合成できます。長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム化合物は、衣類の柔軟剤や界面活性剤に使用可能です。

さらに硫酸ジメチルは、グアニンのイミダゾール環の開環反応によって、DNAを塩基特異的に開裂でき、DNA鎖の切断や塩基配列の決定で役立ちます。また酸化銅(I)と反応すると、硫酸銅(I)が得られます。

3. 硫酸ジメチルの危険性

ラットに対して吸入や静脈内投与によって、がんの発生が確認されています。有毒で取り扱いにくいため、実験室では他のメチル化剤に代替される傾向があります。

ヨウ化メチルはO-メチル化に利用され、高価ですが、危険性が低いです。炭酸ジメチルはヨウ化メチルや硫酸ジメチルよりも毒性が低いため、N-メチル化に硫酸ジメチルの代わりとして使用可能です。ただし硫酸ジメチルは反応効率が高く、入手が容易なため、適切な試薬に判断される場合もあります。

参考文献
http://www.chemicoco.env.go.jp/detail.html
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/77-78-1.html

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