硫酸カルシウムとは
硫酸カルシウムとは、石膏の主成分として知られている、カルシウムの硫酸塩です。
化学式はCaSO4で表され、別称としては硫酸石灰があります。水に溶けにくい無色~白色の結晶であり、天然には二水和物が石膏、無水和物が硬石膏として産出されます。加熱すると水和物の焼き石膏を生じます。化学物質審査規制法 (化審法) では一般化学物質に分類されています。また、農薬取締法では登録農薬に分類されており、食品衛生法においても規制項目があります。
硫酸カルシウムの使用用途
1. 食品添加物
豆腐製造時の凝固剤や、ビールの食品添加物として、硫酸カルシウムが使用されます。
2. 肥料
硫酸カルシウムは難水溶性ではあるものの、炭酸カルシウムよりは溶解度が大きいです。そのため、カルシウム分と硫黄を補給するための肥料として用いられます。土壌酸度に対する影響は小さいです。
3. 石膏
硫酸カルシウムは水と混ぜて硬化することから、陶磁器の型材や建築材、医療用としては歯科模型や骨折した患部を支えるギブスとして利用されます。建築材としては、石膏を紙で挟んだ石膏ボードがよく使用されます。石膏ボードはリサイクル性が高い材料です。
また、硫酸カルシウム無水物 (無水石膏) を微粉砕し、石灰、ミョウバン、ポルトランドセメントといった硬化促進剤を加えたものは、硬石膏プラスターと呼ばれます。これは主に壁材料に使用され、特に緻密なものは装飾用に使用されます。また、先述の焼セッコウ (硫酸カルシウム・五水和物) に、フノリ、ゼラチン、デンプン、ホウ砂といった硬化遅延剤を混合したものも、同様に石膏プラスターとして使用されます。
硫酸カルシウムの性質
硫酸カルシウムの分子量は136.136、比重は2.96、融点1450 ℃、CAS番号は7778-18-9です。濃硫酸には、硫酸水素カルシウム (Ca2(HSO4)2) として溶解します。また、チオ硫酸ナトリウムやアンモニウム塩にも、錯体を生成することで溶解します。
硫酸カルシウムの種類
硫酸カルシウムは結晶水の割合によって、以下の種類に分けられます。
1. 硫酸カルシウム無水物
無水石膏、硬石膏とも呼ばれます。硫酸カルシウム無水物には結晶構造が異なる、Ⅲ型、Ⅱ型、I型が存在します。加熱温度により、異なる結晶構造が得られます。Ⅲ型はさらにα型とβ型に分類することができます。
2. 硫酸カルシウム半水和物
半水石膏、または焼き石膏とも呼ばれます。硫酸カルシウム半水和物には結晶構造が異なるα型とβ型が存在し、結晶系はいずれも三方晶であるものの、比重や硬化時間などが異なります。α型は緻密な構造で硬化強度が大きいことから、医療用等に用いられます。β型はポーラス状の空隙があり、α型と比べて粒子密度が小さく、石膏ボード等の建築資材として利用されます。半水石膏を180度以上に加熱すると、硫酸カルシウム無水物が生成します。
3. 硫酸カルシウム二水和物
二水石膏や軟石膏とも呼ばれます。通常の石膏は硫酸カルシウム二水和物を指すことが多いです。150〜180 ℃で加熱することで、硫酸カルシウム半水和物に変化します。
硫酸カルシウムのその他情報
硫酸カルシウムの製造方法
硫酸カルシウムは天然の鉱石から採掘する方法と、化学的に合成する方法があります。化学的には硫酸分とカルシウム分の反応によって硫酸カルシウムが得られます。
湿法リン酸の生産工程でも硫酸カルシウムが得られます。具体的には、りん鉱石 (Ca5(PO4)3・F) とリン酸 (H3PO4) を反応させて水溶性のリン酸一カルシウム (Ca(H2PO4)2) とフッ化水素 (HF) を得ます。そして、硫酸 (H2SO4) を加えて、リン酸と硫酸カルシウムを生成します。この生産工程で得られるリン酸カルシウムはリン酸石膏とも呼ばれます。リン酸の製造工程以外にも、排煙脱硫工程や、チタン、フッ酸の製造工程でも副次的に硫酸カルシウムが得られます。
参考文献
http://www.chemicoco.env.go.jp/detail.html?
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7778-18-9.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mukimate1953/1979/161/1979_161_139/_pdf/-char/ja
https://www-cycle.nies.go.jp/jp/report/recycled_gypsum_powder_guidelines.pdf
https://www-cycle.nies.go.jp/magazine/mame/201109.html
http://www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/03094250.pdf