硫化水素ナトリウムとは
図1. 硫化水素ナトリウムの構造
硫化水素ナトリウム (英: Sodium hydrosulfide) とは、組成式NaSHで表される無機化合物です。
ナトリウムイオンと硫化水素イオンの塩で、別名には水硫化ナトリウム水硫化ソーダ、ナトリウムヒドロスルフィドなどの名称があります。
CAS登録番号は、16721-80-5です。化学式はNaSHまたはNaHSで表されます。
硫化水素ナトリウムの使用用途
硫化水素ナトリウムの主な使用用途は、合成樹脂原料、有機合成原料、染料原料、硫化染色助剤、硫化染料原料、化繊脱硫、銅鉱山浮遊選鉱、皮革加工薬剤です。具体的には、染料及び種々の有機薬品の中間体、皮革の脱毛、ビスコースレーヨンの脱硫などに用いられます。
そのほか、硫化水素ナトリウムは、水酸化ナトリウムおよび水素を作用させることで硫化ナトリウムNa2Sを生じる物質です。この硫化ナトリウムは、人絹やスフの脱硫剤、硫化染料の製造、ニトロ化合物の還元、皮革の脱毛剤、皮なめしの脱臭剤、写真のセピア調色剤、パルプの蒸解 (クラフト紙製造) 、陽イオン定性分析用試薬などに用いられます。
硫化水素ナトリウムの性質
1. 硫化水素ナトリウム (無水物) の性質
硫化水素ナトリウムは、分子量56.063、融点350℃であり、常温での外観は灰白色の固体です。硫化水素臭を有します。水によく溶ける性質があり、エーテルやアルコールにも可溶です。約40℃で空気中で自然に発火するとされています。密度は1.79g/mLです。
2. 硫化水素ナトリウム (n水和物) の性質
硫化水素ナトリウムn水和物のCAS登録番号は207683-19-0です。融点は53℃であり、常温での外観はうすい黄色~褐色の板状固体です。特異臭をもち、水やエタノールに溶解します。
硫化水素ナトリウムの種類
硫化水素ナトリウムは主に工業用化学薬品や研究開発用試薬製品として販売されています。多くは無水物ではなく、n水和物として販売されています。
1. 研究開発用試薬製品
研究開発用試薬製品には、5g、100g、500g、1kg、3kgなどの容量の種類があります。通常、水和物として販売されており、実験室で取り扱いやすい容量での提供が一般的です。通常、室温で保管可能な試薬製品として扱われます。
2. 工業用化学薬品
工業用化学薬品としての硫化水素ナトリウムは、通常水和物として純度70%製品などとして販売されることが一般的です。容量の種類は25kg紙袋など、工場などで使用しやすい大型容量で提供されています。
想定されている主な用途はPPS樹脂原料、有機合成化学用、皮革脱毛、硫化染色助剤、硫化染料原料、化繊脱硫、銅鉱山浮遊選鉱などです。
硫化水素ナトリウムのその他情報
1. 硫化水素ナトリウムの合成方法
図2. ナトリウムメトキシドを用いる、硫化水素ナトリウムの合成方法
硫化水素ナトリウムの合成法としては、水酸化ナトリウムの水溶液に硫化水素を飽和させる方法が知られています。その他、通常、実験室ではナトリウムメトキシドと硫化水素から合成することが一般的です。
2. 硫化水素ナトリウムの化学反応
図3. 硫化水素ナトリウムと空気との反応による生成物
硫化水素ナトリウムは、還元性、腐食性、強い潮解性を有する物質です。空気中の酸素、二酸化炭素と反応して分解し、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウムが生じます。また、酸との接触で硫化水素を発生し、水溶液の状態でも常時ごく微量の硫化水素を生じます。
硫化水素ナトリウムの品質分析はヨウ素還元滴定によって行われます。これは硫化水素イオンSH–がヨウ素に対して還元力を持つことを利用したものです。
3. 硫化水素ナトリウムの法規制情報
硫化水素ナトリウムは、労働安全衛生法では名称等を表示すべき危険有害物、名称等を通知すべき危険有害物、リスクアセスメントを実施すべき危険有害物に指定されています。法令を遵守して正しく取り扱うことが必要です。
参考文献
http://www.chemicoco.env.go.jp/
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0999.html