硫化リチウムとは
硫化リチウムとは、化学式はLi2Sで表わされるリチウムの硫化物です。
別称としては、硫化二リチウム、チオビスリチウム、ジリチオスルフィドがあります。通常無色~白色の粉末状であり、卵の腐ったような独特の臭気 (腐卵臭) があることが特徴です。不燃性ですが、加熱や酸類との接触により二酸化硫黄や硫化水素が発生します。
また、水に溶けやすいが加水分解しやすく、潮解性があります。水との接触時には発熱を伴い、水溶液はアルカリ性です。水溶液は硫黄を溶解し、Li2S2、Li2S4といったポリ硫化物を生じます。
硫化リチウムの使用用途
硫化リチウムは、全固体電池における正極活物質および固体電解質として有望視されています。近年、電子機器の発達に伴い、二次電池の高密度化、安全性向上が求められており、現行のリチウムイオン電池 (LiB) を代替する次世代二次電池の研究開発が進められています。
そこで、注目されているのが全固体電池であり、なかでも特に期待を集めているのが全固体リチウム-硫黄電池 (LiSB) です。全固体リチウム硫黄電池が実用化されると、ポータブル電子機器だけでなく電気自動車や航空機といった用途拡大が期待されます。
硫化リチウムの性質
硫化リチウムは、分子量45.95、CAS番号12136-58-2で表わされる白色粉末です。融点は900〜975℃、引火点、沸点に関するデータはありません。また密度、pH、溶解度に関するデータもありません。
光により変質する恐れがあるため、日光を避けた場所で取り扱い、保管を行います。
硫化リチウムのその他情報
1. 安全性
硫化リチウムは、GHSの急性毒性・経口 (区分3)、皮膚腐食性/刺激性 (区分1) に分類されます。特に、飲み込むと有毒であり、重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷の恐れがあることから、取り扱い時は人体に曝露しないよう注意が必要です。
消防法、毒物及び劇物取締法、労働安全衛生法において非該当ですが、危険物船舶運送及び貯蔵規則、航空法において腐食性物質に該当します。
2. 応急措置
眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗い流し、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外し、洗浄を続けます。皮膚等に付着した場合は、直ちに汚染された衣類を全て脱ぎ、皮膚を大量の水またはシャワーで洗い流します。
吸入し た場合は、空気の新鮮な場所に移し、呼吸し やすい姿勢で休息させ、症状が回復しない場合は医師への連絡が必要です。万が一飲み込んだ場合、口をすすぎ、無理に吐かせず、直ちに毒劇物センターもしくは医師に連絡します。
3. 取扱方法
屋内作業場で使用する場合は、発生源の密閉化、または局所排気装置を設置します。取扱い場所の近くには、安全シャワー、手洗い・洗眼設備を設け、その位置を明瞭に表示します。
保管容器は、ガラス製を用い、容器は遮光し、冷蔵庫 (2~10°C) で密閉して保管が必要です。また容器内は、不活性ガスを封入して保管します。
作業者は、防塵マスク、不浸透性保護手袋、側板付き保護眼鏡 (必要により ゴーグル型または全面保護眼鏡) 、長袖作業衣の着用が必要です。
4. 火災時の措置
硫化リチウムは、使用してはならない消火剤は無いため、現場状況および周辺環境に適した消火剤を使用して消火活動を行います。
火災時は、熱分解によって刺激性で有毒なガスと蒸気を放出する可能性があることから、消火活動を行う者は個人用保護具の着用が必要です。
5. 製造方法
硫化リチウムの製造時は、まず金属リチウムと硫黄を融点以上に加熱し反応させ生成した硫酸リチウムを炭素、有機物、水素、アンモニアと加熱し還元させます。
最後に硫化水素リチウムエタノール化物を水素気流中で加熱うることで、硫化リチウムが生成されます。ただし、反応条件が過酷であり、制御が難しいことが課題です。
その他、非プロトン性有機溶媒中で水酸化リチウムと硫化水素を反応させる方法などがあります。
参考文献
https://www.osakafu-u.ac.jp/press-release/pr20211028_2/
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20170524/index.html