四塩化ケイ素

四塩化ケイ素とは

四塩化ケイ素とは、ケイ素 (Si) に4つの塩素が結合した構造の無機化合物です。

別名として塩化ケイ素、四塩化シリコン、テトラクロロシラン、シリコンテトラクロライドなどがあります。常温では液体として存在していますが、沸点が57.6℃と低いため、加熱によりすぐに揮発します。

四塩化ケイ素の使用用途

四塩化ケイ素は、そのままの状態で使用されることはほとんどありません。基本的には、他のケイ素化合物の原料として使用されます。

1. 高純度の四塩化ケイ素

シリコン単結晶用やシリコンウエハーのエピタキシャル成長用、エッチングガスなどの半導体分野、合成石英、合成石英ガラス用の原料として使用されています。合成石英ガラスは、純度が高く、金属不純物が少ないです。その上、光をよく通し、熱に強いため、光ファイバーや半導体用のフォトマスクに使用されています。

2. 一般純度の四塩化ケイ素

樹脂の補強充填剤、半導体研磨用のCMPスラリー、接着剤、塗料などの粘性調整剤などに使用される酸化ケイ素 (シリカ) の原料として使用されています。この他、各種有機シリコン (シランカップリング剤、シリコーン樹脂用など) の原料にも使用されます。

四塩化ケイ素の特徴

四塩化ケイ素の分子式はSiCl4で、分子量は169.89です。比重は1.52、融点が-70℃、沸点が57.6℃で、常温常圧では無色の粘性のある液体の状態です。また、息苦しくなるような刺激臭を持っています。エーテル、ベンゼンクロロホルム、四塩化炭素に溶解します。

水、強酸化剤、強酸、アルコール、塩基、ケトン、アルデヒドと激しく反応し、有毒で腐食性の高い塩化水素 (HCl) を生成します。湿気の多い空気中では瞬時に加水分解して塩素ガスを含む白煙を生じます。

水の存在下においては、加水分解で生成した塩酸の働きで、多くの金属を腐食します。このため、使用できる金属はニッケル鋼、銅ニッケル合金などに限られます。樹脂では、ポリエチレンポリ塩化ビニル、テフロンなどが使用可能です。

四塩化ケイ素のその他情報

1. 四塩化ケイ素の製造方法

一般的には、金属ケイ素と塩素、または塩化水素を加熱するか、ケイ化カルシウムなどを塩素化することによって製造されます。必要とする製品純度に対応する純度の原料を使用する必要があります。

金属ケイ素の塩素化:Si + 4HCl → SiCl4 + 2H2
ケイ化カルシウムの塩素化:CaSi2 + 5Cl2 → 2SiCl4 + CaCl2

また、もみがら、稲わらなどのケイ酸バイオマスから四塩化ケイ素を製造する研究も報告されています。

2. 四塩化ケイ素の安全性

取扱上
四塩化ケイ素は、皮膚、粘膜に付着すると、重度の刺激性があり、紅斑・浮腫重度の結膜炎や咳などを引き起こす可能性があります。取扱いの際は、保護マスク、不浸透性保護手袋、側板付き保護眼鏡、長袖作業着などを着用してください。

関連法規
反応性が高く、腐食性の高い物質としては意外なほど、主要な国内法規には該当していませんが、国内の法令においては以下が適用されています。

  • 船舶安全法:腐食性物質 (危規則第3条危険物告示別表第1)
  • 航空法:腐食性物質 (施行規則第194条危険物告示別表第1)
  • 港則法:危険物・腐食性物質 (法第21条2、則第12条、昭和54告示547別表二ロ)

不燃性であり、爆発や火災を発生させる危険性は高くないため、消防法の危険物には指定されていません。しかし、火災が発生した場合は、熱や炎、消火時に使用した水などによって、腐食性や毒性の高い塩化水素ガスが発生し、非常に濃い煙を出すため注意が必要です。危険がなければ、火災場所から容器を移動させる等の処置をとることをおすすめします。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/10026-04-7.html

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