プロトポルフィリン

プロトポルフィリンとは

プロトポルフィリン (英: Protoporphyrin) とは、有機化合物に分類される物質で、ポルフィン環に、4つのメチル基、2つのビニル基、2つのプロピオン酸基が結合した構造をもつポルフィリンの総称です。

化学式はC34H34N4O4で表されます。特に断りのない場合、プロトポルフィリンIXのことを指し、CAS登録番号は553-12-8です。

テトラピロールの1種であるポルフィリンファミリーに属します。プロトポルフィリンは、鉄、マンガン亜鉛、マグネシウムなどと結合して、金属プロトポルフィリンを作ります。プロトポルフィリンの二価鉄錯塩は、ヘモグロビンの色素です。

プロトポルフィリンの使用用途

プロトポルフィリンは、プロトポルフィリン二ナトリウムとして医薬品に用いられる物質です。効能・効果としては、慢性肝疾患における肝機能の改善が挙げられ、肝硬変、慢性肝炎、肝機能障害などの治療に使用されています。また、プロトポルフィリンは体内ではヘムやクロロフィルの前駆体です。

試験研究の用途では、プロトポルフィリンアッセイの標準物質や、蛍光スペクトル分析、ヘム媒介型フェロポーチン1転写を研究する細胞培養における細胞の処理などに用いられます。また、プロトポルフィリンIXは可溶性グアニル酸シクラーゼを活性化することが知られています。

プロトポルフィリンの性質

プロトポルフィリンの基本情報

図1. プロトポルフィリンの基本情報

プロトポルフィリンIXは、分子式C34H34N4O4で表され、分子量562.66の物質です。密度は1.27g/mL、常温では暗紫色の粉末です。

医薬品としては、プロトポルフィリン二ナトリウムとして用いられます。このナトリウム塩は、常温において赤紫色~黒紫色の粉末であり、融点は300℃以上です。無臭で、弱い塩味があるとされます。水やエタノールに溶けやすく、ジエチルエーテルやクロロホルムにはほとんど溶けない性質です。

プロトポルフィリンの種類

プロトポルフィリンの誘導体群

図2. プロトポルフィリンの誘導体群

プロトポルフィリンIXは、主に研究開発用試薬製品として販売されています。容量は5mg、25mg、1gなどであり、実験室用の容量の中でも比較的小さい容量での提供です。

通常のプロトポルフィリンの他に、安定同位体標準物質として2H6-プロトポルフィリンIXも販売されています。また、誘導体も多く提供されており、亜鉛プロトポルフィリンや、プロトポルフィリン IX ジメチルエステル、ヘミン、などが挙げられます。

プロトポルフィリンのその他情報

プロトポルフィリンの生合成

プロトポルフィリンの生合成の例

図3. プロトポルフィリンの生合成の例

プロトポルフィリンは、生体内でδ-アミノレブリン酸を出発物質として、数段階の酵素反応を経て合成されています。具体的な酵素反応は下記のとおりです。

1. ピロール環構造を持つポルフォビリノーゲンの生成
δ-アミノレブリン酸2分子がアミノレブリン酸脱水酵素によって脱水縮合。

2. ヒドロキシメチルビランの生成
ポルフォビリノーゲン4分子が、ポルフォビリノーゲン脱アミノ酵素によってアンモニアを脱離して結合し、ピロールが4つ直線状に連結した構造となる。

3. ウロポルフィリノーゲンIIIの合成
ヒドロキシメチルビランがウロポルフィリノーゲンIIIシンターゼによって縮合し、環構造となる。

4. コプロポルフィリノーゲンIIIの合成
ウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素によって4つの酢酸基が脱炭酸され、メチル基となる。

5. プロトポルフィリノーゲンIXの合成
コプロポルフィリノーゲン酸化酵素によって2箇所のプロピオン酸基が酸化され、ビニル基に変換される。

6. プロトポルフィリンIXの合成
プロトポルフィリノーゲン酸化酵素によって酸化される。

参考文献
Yi Liu-Chittenden, et al. Genetic and pharmacological disruption of the TEAD–YAP complex suppresses the oncogenic activity of YAP. Genes Dev. 2012 26(12):1300-5.

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