フーゼル油

フーゼル油とは

フーゼル油の基本情報

図1. フーゼル油の基本情報

フーゼル油 (Fusel oil) とは、糖類やでんぷんを発酵してエタノールを製造する際に、得られる副産物の1種です。

具体的には、エタノールを分留して精製する際に高沸点の揮発性成分として得られる留分のことを指します。CAS番号は8013-75-0です。フーゼル油は混合物であり、その成分は、発酵原料や酵母の種類、発酵方法、蒸留方法などによって異なります。各成分はそのどれもがエタノールよりも沸点が高い物質です。

主な成分としては、 (S)-2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノールなどの炭素数5のアルコールが挙げられ、残りはイソブチルアルコールやn-プロピルアルコールといった、その他の高級アルコールなどが含まれています。

なお、フーゼル油は水に溶けにくく比重が水よりも軽いため、蒸留酒を作った際に油滴として分離し酒を濁らせたり表面に浮いてくることもあります。また、フーゼル油は、独特の臭気をもっているため、フーゼル油の含有率が高い酒類は、飲料に適さないとされています。

フーゼル油の使用用途

フーゼル油は、アミルアルコール (3-メチル-1-ブタノール) やtert-アミルアルコール (2-メチル-2-ブタノール)が工業的に生産されるようになるまでは、これらのアルコールの主要な供給源として利用されていた物質です。

化学処理や蒸留によって精製されたフーゼル油は、アミルアルコールがほとんどの割合を占める混合物となります。そのため、そのまま使用するか、あるいは酢酸エステルにして、アルキド樹脂・ニトロセルロース等の合成樹脂類や塗料などに、高沸点溶剤として用いられています。

フーゼル油を分留し、含有成分を分離することによって得られた各成分は、香料や溶剤として用いられています。フーゼル油には独特の臭いがあり、酒類にとって好ましくありませんが、微量含まれている場合には、香気成分として役立っています。

フーゼル油の性質

フーゼル油の主成分

図2. フーゼル油の主成分

常温では通常、無色或いは黄色ないし褐色の液体です。沸点は110〜130℃、密度0.810〜0.850g/mLであり、エタノールに溶けやすい性質を示します。一方、水には溶けにくい性質です。

フーゼル油の主成分は、 (S)-2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノールといった炭素数5のアルコールです。その他の成分には、アルコール類 (プロパノール、ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、1-ヘキサノールなど) や、酢酸エステル (酢酸イソアミルなど) 、中鎖脂肪酸のエチルエステル (ヘキサン酸エチル、オクタン酸エチル、デカン酸エチルなど) などを含みます。

また、発酵に使用された原料によっては、遊離の脂肪酸やフルフラールの誘導体やピラジン類などを含むことがあります。

フーゼル油の種類

フーゼル油は、香料原料や研究開発用試薬製品として販売されています。研究開発用試薬製品は100g , 500g , 1kgなどの実験室で取り扱いやすい容量で提供されています。通常、常温で保管可能な試薬製品です。

フーゼル油のその他情報

1. フーゼル油の保管

フーゼル油は、通常の保管条件では安定な物質とされていますが、高温・直射日光・炎・静電気などを避けて保管することが必要です。また、強酸化剤との混触も好ましく有りません。危険有害な分解生成物として、一酸化炭素二酸化炭素が挙げられます。

2. フーゼル油の安全性情報

フーゼル油は、引火性のある物質であり、引火点は45.5°C (密閉式引火点試験) です。そのため、消防法では「危険物第四類 第二石油類 危険等級Ⅲ」に指定されており、労働安全衛生法では「危険物・引火性の物」に指定されています。

法令を遵守して正しく取り扱うことが求められています。

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