フェノール樹脂

フェノール樹脂とは

フェノール樹脂

フェノール樹脂は耐熱性、耐薬品性、絶縁性などに優れた樹脂で、自動車、電子部品、断熱材など幅広い用途に使われています。フェノール樹脂はフェノール類とアルデヒド類を原料とした重合反応によって得られる樹脂で、原料のフェノールやアルデヒドの化学構造、樹脂に添加する添加剤などを変えることで物性が変わります。

フェノール樹脂は酸触媒反応で得られるノボラック型と塩基触媒反応で得られるレゾール型という2つの化学構造が異なるものに分類されます。前者はエポキシ樹脂などの硬化剤と混ぜて加熱することで硬化反応が起こり、後者は硬化剤がなくとも加熱だけで硬化反応が起こります。その他、ノボラック型は熱可塑性、レゾール型は熱硬化性といった違いもあります。

フェノール樹脂の使用用途

フェノール樹脂は1907年にベークライトによって発明された世界初の人工プラスチックです。耐熱性、耐薬品性、絶縁性、機械的強度に優れた樹脂で、今もなお幅広い業界で用いられています。例えば自動車のブレーキ用の樹脂、鉄鋼やガラス業界といった高温プロセスの部品にフェノール樹脂は使われています。その他、住宅の断熱材やフォトレジスト用の樹脂としても使われています。

フェノール樹脂は原料として用いるフェノール類、アルデヒド類の構造を変えて樹脂の化学構造を変えたり、充填剤などの添加剤を変えることによって物性を変えることができます。そのため、要求特性に応じて最適なフェノール樹脂を選定する必要があります。

フェノール樹脂の種類

フェノール樹脂の種類

図1. フェノール樹脂の種類

フェノール類とアルデヒド類を反応させることで得られるフェノール樹脂には「ノボラック型」と「レゾール型」があります。ノボラック型の樹脂は酸触媒下で反応させることで得られ、再利用可能な熱可塑性樹脂です。一方でレゾール型は塩基触媒を用いて得られる再利用不可な熱硬化性樹脂です。

ノボラック型はエポキシ樹脂などの硬化剤とともに加熱することで硬化反応が起こり、高分子量化した樹脂が得られます。一方でレゾール型は硬化剤がない場合でも加熱や酸によって硬化反応が進みます。そのため、レゾール樹脂は貯蔵中にも経時変化を起こして高分子量化することがあります。

フェノール樹脂のその他情報

1. フェノール樹脂の合成

フェノール樹脂の合成

図2. フェノール樹脂の合成

フェノール樹脂はフェノール類とアルデヒド類を付加縮合させることで得られます。ここでは代表例としてフェノールとホルムアルデヒドの反応を紹介します。

上述の通り、酸触媒と塩基触媒で得られる化合物は異なります。酸触媒を用いた場合、フェノールのOH基のオルト位、またはパラ位で求電子置換反応が起こり、ホルムアルデヒドと反応します。そして反応後、別のフェノールとの間で縮合反応が起こり、ノボラック型の樹脂が得られます。

一方で塩基触媒を用いた場合はフェノールのベンゼン環に複数のホルムアルデヒドが反応してレゾールと呼ばれる油状の混合物が得られます。これを加熱することでレゾール同士が反応して結合したレジットと呼ばれる熱硬化性樹脂が生成します。

このように酸触媒と塩基触媒を用いた場合ではフェノール類とアルデヒド類の結合部位や反応する量が異なるため、得られるフェノール樹脂の構造や物性も異なります。

2. フェノール樹脂の短所と注意点

フェノール樹脂には様々な長所がある一方で、いくつか短所もあります。例えばフェノール樹脂は水の存在下で水酸化ナトリウムなどの強塩基と接触すると加水分解を起こすため、樹脂の劣化が起こります。

その他、フェノール樹脂は樹脂自体が黄色、赤褐色に着色しており、酸化すると黒くなるため、着色可能な範囲には限界があります。また、フェノール樹脂は硬い一方で脆いという欠点もあります。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/networkpolymer/34/1/34_45/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/47/9/47_KJ00003521014/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/networkpolymer1980/14/4/14_196/_pdf/-char/ja

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