炭化カルシウムとは
炭化カルシウム (英: Calcium carbide) とは、灰色がかった白色の固体です。
炭化カルシウムの化学式はCaC2、分子量は64.10、CAS登録番号は75-20-7で、カルシウムカーバイドが別名です。1862年にドイツの化学者であるフリードリヒ・ヴェーラーは、炭化カルシウムと水との反応からアセチレンと水酸化カルシウムが生成することを初めて発見しました。
燃料用に市販されているカルシウムカーバイドは、灰白色の塊状固体です。 主にアセチレンガスの簡易な製造源として利用されます。工業製品名としては、カーバイドと呼ばれています。
炭化カルシウムの性質
炭化カルシウムの融点は約2,300℃で、相対密度は2.22です。常温での一般的な結晶形は正方晶系で、カルシウムイオン (Ca2+) とアセチリドイオン (C22−) で満たされた塩化ナトリウム型の結晶構造をとります。
加熱していくと、450℃ で立方晶系に転移します。純粋な炭化カルシウムは無色ですが、低純度の炭化カルシウムの破片は灰色または茶色で、約80〜85%のCaC2で構成されています。残りはCaO (酸化カルシウム)、Ca3P2 (リン化カルシウム)、CaS (硫化カルシウム)、Ca3N2 (窒化カルシウム)、SiC (炭化ケイ素) などです。
炭化カルシウムの使用用途
炭化カルシウムのおもな用途は、石灰窒素肥料の原料および溶切断用アセチレンバーナーへの使用です。また、実験室・野外などで、小規模なアセチレン発生用にも用いられています。伝統的な照明器具であるアセチレンランプは、炭化カルシウムに水を滴下することで発生させたアセチレンガスを燃焼させています。
各種の有機化合物を合成するためのアセチレンは、古くには炭化カルシウムからレッペ反応で製造していましたが、その後石油化学製品を原料にする形に変わりました。金属製造用の還元剤にも用いられており、製鉄製造の製鋼工程においては、脱硫、脱酸剤としても使用されています。
炭化カルシウムのその他情報
1. 炭化カルシウムの製法
炭化カルシウムは、コークスと生石灰を2,200℃ 以上に電気炉などで加熱して製造します 。
CaO+3C→CaC2+CO
この反応に必要な高温は、従来の燃焼では実際には達成できないため、反応はグラファイト電極を備えた電気炉で行われます。電気炉法は、1892年にT.L.ウィルソンによって発見され、同じ年にH.モアッサンによって独立して発見されました。
2. 炭化カルシウムの反応
炭化カルシウムは、水と接触するとアセチレンを生成します (CaC2+2H2O→C2H2+Ca(OH)2)。1gの炭化カルシウムから370mLのアセチレンが合成できます。
炭化カルシウムは、高温下 (約1,100℃) で窒素と反応させると、肥料として使われているカルシウムシアナミドが生成します (CaC2+N2→CaCN2+C)。窒素分子の三重結合を化学的に切断する数少ない方法の一つです。
3. 法規情報
炭化カルシウムは国内法規上において、毒物及び劇物取締法や化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) には指定がありません。
一方で、労働安全衛生法では「危険物・発火性の物」、消防法では「危険物第3類自然発火性物質及び禁水性物質 (危険等級II)、カルシウムの炭化物」に指定されているので、取り扱いには注意が必要です。
4. 取扱いおよび保管上の注意
取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。
- 直射日光を避け、換気の良いなるべく涼しい場所に容器を密栓して保管する。
- 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
- 水や湿気と激しく反応し爆発のおそれがあるため、接触を避ける。
- 発火し激しく燃焼する可能性があるため、塩化鉄、酸化鉄、塩化スズとの混合は避ける。
- 火災や爆発のおそれがあるため、ハロゲンや塩化水素、鉛、フッ化マグネシウム、過酸化ナトリウム、硫黄との接触は避ける。
- 使用時は保護手袋、保護衣、保護眼鏡を着用する。
- 取扱い後はよく手を洗浄する。
- 皮膚に付着した場合は、大量の水で洗い流す。
- 眼に入った場合は、水で15~20分間注意深く洗う。