窒化ガリウムとは
窒化ガリウム (英: Gallium nitride) とは、淡い灰色の粉末です。
化学式はGaNで、ガリウムと窒素の1:1の化合物であり、分子量は83.73、CAS登録番号は25617-97-4で表される半導体です。そのバンド構造において禁制帯のエネルギー幅が広いことから「ワイド・バンドギャップ半導体」とも呼ばれています。
主に青色発光ダイオードの材料として用いられています。また、近年ではパワー半導体やレーダーへの応用も期待されています。その性能の高さからシリコンに代わる「次世代の半導体」として注目されています。
窒化ガリウムの使用用途
窒化ガリウムは従来、青色LEDやレーザーダイオードの材料として広く用いられてきました。現在は、バンドギャップが3.4と高いため、Siのバンドギャップ1.1に対して、ワイドギャップ半導体と呼ばれています。
窒化ガリウムは、飽和ドリフト速度が高いことや破壊電界強度が高いことが特徴です。高耐圧化や低損失化、スイッチングスピードの高速化を可能とします。シリコン製のダイオードやトランジスタを窒化ガリウム機器へと置き換えることで、電力損失を小さくし、発熱量を減少させ、機器そのものを小型化することが可能です。
また、5G通信基地局用途として、GaN HEMT (高電子移動度トランジスタ) の需要も高まっています。
窒化ガリウムの性質
窒化ガリウムは、融点が800℃、沸点が1,600℃以上、密度が6.1g/cm3です。化学的に非常に安定な物質で、塩酸、硫酸、硝酸などの一般的な酸や塩基には溶けませんが、紫外線を照射することで、強アルカリに溶解します。
なお、窒化ガリウムの主な特徴は、以下のとおりです。
- 熱伝導率が大きく、放熱性に優れている
- 高速スイッチング・高温動作が可能
- 飽和電子速度が大きい
- 絶縁破壊電圧が高く、耐久性に優れている
窒化ガリウムの構造
窒化ガリウムの結晶構造はウルツ鉱型の四面体構造をとっており、空間群はC6v4–P63mcで格子定数はa=3.19Å、c=5.19Åです。純粋な結晶では、格子定数の異なるサファイアまたは炭化ケイ素の薄膜に堆積することができます。
シリコンまたは酸素をn型に、マグネシウムをp型にドープすることができますが、Si原子とMg原子はGaN結晶の成長方法を変えてしまい、引張応力により結晶が脆くなってしまいます。
窒化ガリウムのその他情報
1. 窒化ガリウムの製法
窒化ガリウムの結晶は、100℃、750気圧の窒素圧力下に保持されたNa/Ga溶融液から成長させることができます。また、常圧で900〜980℃の溶融ガリウムにアンモニアガスを注入することによっても合成できます。
2Ga + 2NH3 → 2GaN + 3H2
Ga2O3 + 2NH3 → 2GaN + 3H2O
低温でバッファー層を堆積させることで、結晶性の高い窒化ガリウムを得ることができ、このような高品質の窒化ガリウムから、p型GaN、pn接合青色/UV-LEDなどの発見につながりました。
2. 法規情報
毒物及び劇物取締法、消防法、化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) など、主要な法規制のいずれにも該当していません。
ただし、窒化ガリウムのダストは、皮膚、目、肺を刺激する物質ですので、取り扱いには注意が必要です。
3. 取扱いおよび保管上の注意
取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。
- 容器を密栓し、乾燥した冷暗所に保管する。
- 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
- 水や湿気と接するとアンモニアガスを生じるため、湿気を避ける。
- 有害なガリウム酸化物や窒素酸化物を生じるため、強酸化剤との接触を避ける。
- 使用時は保護手袋、保護眼鏡、保護衣、保護面を着用する。
- 粉塵を吸い込まないよう、充分注意する。
- 取扱い後はよく手を洗浄する。
- 皮膚に付着した場合は、速やかに水で洗い流す。
- 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗う。