ワイヤー放電加工

ワイヤー放電加工とは

ワイヤー放電加工とは、電流を通した細いワイヤーを使って金属の表面を加工する技術のことです。

ワイヤー線の直径が0.02mmから0.3mmの範囲にあり、通常の機械加工では困難な形状の作成や精密加工が可能な点が大きな特徴です。また、応用範囲は広く、導電性のある素材であれば、硬度が非常に高いものであっても加工可能できます。

例えば、鉄やステンレス、銅、アルミニウム、真鍮などの主要な金属素材などです。ワイヤー放電加工は、その精密性と対応可能な素材の幅広さから、今後さらなる発展と活用が期待される加工技術と言えます。

ワイヤー放電加工の使用用途

ワイヤー放電加工は、その高精度な性能から、複雑で精密な加工が必要な用途に広く利用されています。具体的には、微細ギアの製造や超精密プレス型の加工など、直径0.05mm以下の極めて緻密な加工を必要とする場面でその真価を発揮します。

この加工法は、導電体を対象にするため、形状に制限はほとんどありません。さらに、プログラムに従ってワイヤーが動き、繊細なパターンでも一貫して加工が可能です。従来の加工方法では「粗取り」「中仕上げ1」「中仕上げ2」「最終仕上げ」といった4段階の工程が必要でしたが、ワイヤー放電加工ではこれらが1度で済みます。

ワイヤー放電加工の原理

ワイヤー放電加工とは、放電現象を用いて金属を切断する技術です。極細のワイヤー電極と工作物の間に数千度の高温を発生させ、金属を融解・除去することで形成を行います。

具体的な手順として、工作物をテーブルにセットし、ワイヤー線をスタート穴に通します。ワイヤーと工作物を数十ミクロンまで接近させれば、パルス電流による火花放電の開始です。高温により工作物が融解し、純水が水蒸気爆発を起こして融解した金属を除去します。毎秒数十万回の放電により切断加工が行われます。

ワイヤー放電加工は、導電体であれば厚みや硬さに関係なく加工が可能で、直線だけでなく、円弧や複雑な形状の加工も可能です。さらに、加工に使用されるワイヤーが工作物と直接触れないため、刃先の消耗が少なく、コストを抑えられます。

ただし、ワイヤー放電加工の加工スピードは比較的遅く、時間がかかるため、大量生産には向いていないという欠点もあります。特性を理解した上で、ワイヤー放電加工が最適な使用環境を見極めることが重要です。

ワイヤー放電加工のその他情報

ワイヤー放電加工に使用される機械

ワイヤー放電加工に使われる機械としてCNCワイヤー放電加工機、マルチ軸ワイヤー放電加工機、マイクロワイヤー放電加工機、サブマージ型ワイヤー放電加工機、自動糸送りワイヤー放電加工機、ロボットアーム式ワイヤー放電加工機の6種類があります。

1. CNCワイヤー放電加工機
CNC (コンピュータ数値制御) ワイヤー放電加工機は、高精度の加工を実現するための最も一般的な機械です。ワイヤーの動きを精密に制御することで、複雑な形状の加工を可能にします。

2. マルチ軸ワイヤー放電加工機
マルチ軸ワイヤー放電加工機は、複数の軸を同時に制御することで、3次元の複雑な形状の加工を可能にします。一般に、3軸以上の制御を行うことが可能です。

3. マイクロワイヤー放電加工機
微細な加工が必要な場合には、マイクロワイヤー放電加工機が用いられます。極細のワイヤーを使用して、微細な部品や高精度な切断を行うことが可能です。

4. サブマージ型ワイヤー放電加工機
サブマージ型ワイヤー放電加工機は、加工部分を液体 (通常はデイオナイズドウォーター) で満たし、放電時の安定性を向上させるために使用されます。

5. 自動糸送りワイヤー放電加工機
自動糸送り機能付きのワイヤー放電加工機は、一連の作業を自動化することで、効率的な大量生産を可能にします。ワイヤーの破損や交換が自動的に行われ、生産性の向上に貢献します。

6. ロボットアーム式ワイヤー放電加工機
ロボットアーム式ワイヤー放電加工機は、柔軟性と効率性を兼ね備えています。ロボットアームを使用してワイヤーを操作することで、複雑な形状や大きな作業物に対応する能力を持ちます。

また、ロボットアームの高度なプログラム制御により、加工過程を自動化し、生産効率を大幅に向上させることが可能です。複雑なパートの製造や大規模な生産ラインで特に役立ちます。

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