キャプタンとは
キャプタン (化学式: C9H8Cl3NO2S) とは、殺菌剤に分類され、糸状菌や細菌など植物病原菌の有害作用から農作物等を守る用途で使用される農薬の1種です。
特徴として、多作用点阻害の特性を持つことが挙げられます。他の殺菌剤は、菌糸の呼吸阻害や細胞壁阻害など特定の作用により殺菌効果を得ますが、キャプタンは、これらの複数の阻害作用を持っています。
農薬の作用機構による分類ではコード、M (多作用点接触活性) のグループに分類されています。複数の作用により菌糸の成長を阻害するため、菌に耐性がつきにくいことです。
常温常圧では無臭で、白色粉末状の個体として存在し、水に溶かして使用することが多いです。
キャプタンの使用用途
キャプタンは、殺菌剤として野菜・果樹の病気予防・治療を目的として使用されます。使用方法は大きく分類して、2種類あります。
1. 農作物に散布して使用
1つ目は、キャプタンを原料とする殺菌剤を、水に希釈して農作物に散布する方法です。この方法は生育初期から生育後期にかけて行います。
キャプタンの持つ多作用点阻害による殺菌効果により他の薬剤の耐性菌にも強いため、適用範囲が広いのが特徴です。リンゴ、梨、ブドウ、桃、梅などの果樹類、ナス科、ウリ科などの野菜類、薔薇などの花類まで幅広く適用可能です。また、観葉植物の病害防除もできます。
特に、キュウリのベと病対策や、ハウス栽培のトマトやイチゴの灰色かび病防除などに高い効果があります。農作物によっては、収穫前日まで散布できるものもあり、散布から収穫までの作業がスムーズに行える点が特徴です。
2. 種子にまぶして使用
2つ目は、キャプタンを原料とする殺菌剤を、種子にまぶして使用する方法です。登録の基準量として、種子重量の0.2%から0.4%の薬剤を種子に紛衣して使用します。
この方法は農作物の種子を播種するときに、種子の表面や内部、さらに畑の土や培土などに潜む病原菌から種子を守り、安定した発芽のために行います。
キャプタンの種子消毒により、トマトやナス、ピーマンなどのナス科やキュウリやメロン、スイカなどのウリ科、カボチャなどの苗立枯病の予防と未熟トウモロコシ、野菜類のピシウム、リゾクトニア菌による病害予防になります。
キャプタンの種類
キャプタンは使用する成分量で次のような殺菌剤に分けられて、使用されています。
1. オーソサイド水和剤80
オーソサイド水和剤80は、有効成分にキャプタンを80.0%含んでいます。野菜類の苗立枯病や、つる枯病、灰色かび病、果樹類の褐斑病、炭疽病、花き類の苗立枯病、ウリ科作物、ナス、ショウガの種子消毒などに登録があり、幅広い作物と病気に登録があることが大きな特徴です。
また、幼苗期の土壌潅注処理で登録がある作物もあり、苗の育苗期に高い効果を発揮します。
2. オキシラン水和剤
オキシラン水和剤は、有効成分にキャプタンを20.0%含んでいます。さらに、オキシラン水和剤はキャプタン以外に8-ヒドロキシキノリン銅を30.0%含んでいます。
野菜類のつる枯病や黒斑病、べと病、果樹類の炭疽病、斑点病、芝の葉腐病に登録があり使用できます。また、2つの有効成分を含有しているため、幅広い作物と病原菌に対して予防効果があることが特徴です。
3. キャプレート水和剤
キャプレート水和剤は、有効成分にキャプタンを60.0%含んでいます。さらに、キャプレート水和剤はキャプタン以外にベノミルを10.0%含んでいます。ナシの輪紋病や黒星病、ナスやトマトの灰色かび病に登録があり、使用できます。予防と治療効果があり、効果の効きが長いことが特徴です。
キャプタンその他情報
使用上の注意
- 使用の際は、手袋、マスク、防護メガネを着用し、目や鼻や皮膚に直接かからないように注意が必要です。
- 1日摂取許容量が定められているので、その数値以上の量を摂取しないことが求められます。
- 蚕やミツバチ、天敵生物に一定量以上で障害がでる可能性があるため、近くにいる環境での使用は注意が必要です。