イプロジオン

イプロジオンとは

イプロジオン (化学式:C13H13C12NO) とは、殺菌剤に分類され、糸状菌や細菌など植物病原菌の有害作用から農作物等を守る用途で使用される農薬の成分です。

ジカルボキシイミド系の殺菌剤であり、農薬の作用機構による分類では、シグナム伝達のグループに該当します。細胞壁合成阻害作用という菌体の伸長を阻害する効果を持ち、菌体を異常に膨潤化させて細菌細胞を破裂させる作用により殺菌作用が得られます。

イプロジオンは持続効果が長い点が特徴です。さらに、各種耐性菌にも効果を発揮し、耐性菌が問題になっているキュウリやイチゴなど多くの農作物の灰色かび病、果樹類などの斑点落葉病、黒斑病、灰星病などにも高い効果を発揮します。

常温常圧では無臭で白色粉末状の個体として存在し、主に水に溶かして使用します。

イプロジオンの使用用途

イプロジオンは野菜・果樹の病気予防・治療を目的として使用されます。効果のある菌は、アルタナリア属菌、ボトリチス属菌、スクレロチニア属菌、モニリア属菌やヘルミントスポリウム属菌、カーブラリア属菌です。使用方法は大きく分類して3種類あります。

1. 農作物に散布する

1つ目は、イプロジオンを成分とする殺菌剤を、水に希釈して散布する方法です。この方法は生育初期から生育後期にかけておこないます。

また、キュウリやナス、イチゴなどの野菜類、ウメやブドウなどの果樹類、シバや茶など登録のある農作物と灰色かび病や灰星病、菌核病、葉枯病など使用できる病気が多いことが大きな特徴です。

2. 種子にまぶす

2つ目は、イプロジオンを成分とする殺菌剤を、種子にまぶして使用する方法です。殺菌剤の種類にもよりますが、種子の重量の0.5%の薬剤を種子に紛衣して使用する登録が多いです。

この方法は、農作物の種子を播種するときに、種子の表面や内部、さらに培土や畑の土に潜む病原菌から種子を守り、安定した発芽のためにおこないます。

イプロジオンの種子消毒により、野菜類のアルタナリア菌による病害の予防やニンジンの黒葉枯病の予防に高い効果があります。

3. くん煙させる

3つ目は、イプロジオンを成分とする殺菌剤を、くん煙させて使用する方法です。この方法は、温室やビニールハウスなどの密閉できる場所でのみ使用できる方法です。

殺菌剤を吊り下げるか、専用の台の上に置き、指定の点火紙に点火して使用します。点火後は煙が蔓延するので、発煙が確認できたら速やかにハウス等の外に出る必要があります。

イプロジオンのくん煙は、キュウリやナス、トマトなどの灰色かび病や菌核病の登録があり、使用できます。また、点火するだけで防除ができるため、作業の省力化につながることが大きな特徴です。

イプロジオンの種類

イプロジオンは使用する成分量で次のような殺菌剤に分けられ、使用されています。

1. ロブラール水和剤

ロブラール水和剤は有効成分にイプロジオンを50.0%含む、粉状の殺菌剤です。野菜類の菌核病やつる枯病、果樹の灰星病や灰色かび病、さらに花き類やシバにも登録があり幅広い農作物に使用できます。

散布方法も水に希釈して散布する方法だけでなく、種子消毒や常温煙霧による使用もできます。

2. ロブラールくん煙剤

ロブラールくん煙剤は有効成分にイプロジオンを20.0%含む、発煙性中空円板状の殺菌剤です。

使用方法はハウスや温室など密閉できる場所で、くん煙にして使用します。トマトやキュウリ、ナスなどの灰色かび病や菌核病に登録があり使用できます。

3. ロブドー水和剤

ロブドー水和剤は有効成分にイプロジオンを16.5%含んでいます。さらにロブドー水和剤はイプロジオン以外に8-ヒドロキシキノリンサン銅も34.0%含む粉状の殺菌剤です。

イプロジオンと有機銅の複合剤でナシ、レタスの主要病害に優れた防除効果を発揮します。また、シバにも登録があり使用できます。

イプロジオンその他情報

使用上の注意点

  • 眼や粘膜に対する刺激が強いため、使用時は手袋、マスク、保護メガネを着用し、眼や鼻、皮膚に直接かからないように注意が必要です。
  • 水生動物に影響がでる可能性があるため、散布液や廃棄液が川や池などに流出しないように注意が必要です。
  • 熱や火花および火炎で発火するおそれがあるため、周囲に火のもとがある環境では使用できません。

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