スミチオンとは
スミチオンとは、住友化学が開発した有機リン・有機硫黄系の殺虫剤に分類される農薬です。
スミチオンは商品名であり、有効成分であるフェニトロチオン (化学式: C9H12NO5PS) が主成分となる化学物質です。駆除対象生物の神経に作用する殺虫剤で、神経の情報伝達を行う興奮性神経伝達物質の1種であるアセチルコリンの分解酵素の作用を阻害します。その結果、駆除対象生物に興奮を与え続け、殺虫効果が発現します。
野菜類のアブラムシ防除から樹木のケムシ類など多くの害虫に登録があり、さらに価格も比較的安価なため家庭菜園の方からプロの農家や造園関係者まで使用範囲は幅広いです。また、人畜に対する毒性は他の有機リン系の農薬と比べ低く、日本では半世紀にも渡って使用されている農薬です。
スミチオンの使用用途
スミチオンの使用用途は、害虫の防除です。多くの農作物に登録があり、特に防除できる害虫は樹木に発生するケムシ類、果樹に発生するシンクイムシやカイガラムシ類、イネに発生するウンカやイネシンガレセンチュウ、野菜類に発生するアブラムシやカメムシです。
この中でも樹木に発生するケムシ類の防除では、アブラムシやイモムシ類に比べてケムシ類に登録がある農薬が少ないため、スミチオンは大きな役割を果たします。スミチオンは微量でも高い殺虫効果を発揮し、農薬が害虫に当たると効果を発揮する接触毒、農薬が散布された葉や果実を口にすると効果がある食毒効果、害虫の卵をふ化させない殺卵効果に優れています。
接触毒と食毒効果は害虫が発生した時の対策で、殺卵効果は害虫の発生を防ぐ予防に使えます。
スミチオンの特徴
長所
- イネや樹木、果樹、野菜類まで幅広い農作物に登録があります。
- 散布した葉の表から裏へと染み渡る浸達性があるため、食毒効果により葉や果実をなめたり、かじったりする害虫に効果的です。
- 低価格で購入できるため、気軽に使いやすいです。
短所
- 薬剤や散布機のコストがかかります。コストに見合う効果がでるか検討してから使用することが大切です。
- 形状や成分量が商品によって異なります。また、登録作物や使用方法も変わるため、それぞれの違いを理解する必要があります。
スミチオンの種類
スミチオンは形状により、次のように分類することができます。
1. スミチオン乳剤
スミチオン乳剤は形状が液体です。水に希釈して使用し、水に希釈すると白色の乳濁色になるのが特徴です。樹木のケムシ類や果樹のシンクイムシ、イネのウンカ類、野菜や花きのアブラムシなど幅広い農作物、害虫に登録があります。
散布方法は、希釈して農作物に散布を行います。作物によっては無人航空機による散布もできるため、作業の省力化できることも特徴の1つです。
2. スミチオン水和剤
スミチオン水和剤は形状が粉状です。水和剤なので水に希釈して使用します。水に希釈すると不透明な液体になり、放置しておくと沈殿ができることが特徴です。
多くの果樹類に登録されており、アブラムシ、カイガラムシ類、シンクイムシ、カメムシなどに高い防除効果があります。散布方法は、希釈して農作物に散布を行います。
3. スミチオン粉剤
スミチオン粉剤は、水和剤と同じく形状が粉状です。粉剤なので水で希釈はせずに、そのまま使用します。イネのウンカやカメムシ、ダイズのカメムシ防除に粉剤を散布して使用します。
スミチオンその他情報
スミチオンを使用する上での注意点
- 散布時は手袋やマスクを着用し、目や鼻、肌に直接かからないよう注意が必要です。
- 解毒剤として硫酸アトロピン製剤およびPAM製剤があります。
- 農作物の受粉を助けるためのミツバチに影響が出るため、ミツバチを放飼中の施設では使用をさける必要があります。また、近隣で養蜂を行っている場合、関係機関に使用農薬の情報を提供する必要があります。