プロパンジオール

プロパンジオールとは

プロパンジオールとは、2種類の構造異性体が存在するプロパンの二価アルコールです。

1つ目の構造異性体は1,2-プロパンジオール (英: propylene glycol) で、モル質量は76.1g/mol、融点は-59℃、沸点は188℃、CAS番号は57-55-6です。プロピレングリコールとも呼ばれ、常温では無味、無色、無臭で吸湿性のある液体です。水、アセトンクロロホルムなどの極性溶媒にはよく溶ける性質があります。人間の皮膚や眼に対しては軽度の刺激性を持ちますが、低用量では慢性的な毒性は見られないとされています。

2つ目は1,3-プロパンジオール (英: 1,3-propane diol) で、モル質量は76.1g/mol、融点は-27℃、沸点は211-217℃です。別名トリメチレングリコールやPODともよばれ、常温では無色の液体です。水、アルコールには完全に混和し、エーテルにもよく溶ける性質を持ちます。人体に対する刺激性が低く、安全性が高い物質です。

プロパンジオールの性質

プロパンジオールの性質は、下記のように種類によって異なります。

1. 1,2-プロパンジオール

1,2-プロパンジオールは、プロパンの1位と3位の炭素にヒドロキシ基が結合した構造です。中央の炭素はキラル炭素となっているため、鏡像異性体が存在します。工業的には、主に酸化プロピレンの加水分解によって合成されてきました。別の合成法として、1,2-ジクロロプロパンを炭酸水素ナトリウム水溶液で処理することによっても合成することができます。

2. 1,3-プロパンジオール

1,3-プロパンジオールは、プロパンの1位と3位の炭素にヒドロキシ基が結合した構造です。化学的には、有機化合物を強力な還元剤や水素で還元したり、アクロレインの水和を行うことによって製造することができます。

しかし、近年ではグリセリンやグルコースを微生物に還元させて合成させる手法が工業化されており、利用されるようになりました。グリセリンは植物や動物の油脂から得ることができる物質なので、この合成法で得られる1,3-プロパンジオールは天然物由来であるといえます。

この方法では、副生成物として乳酸酢酸、2,3-ブタンジオールなども生成することがあり、これらの副生成物を以下に有効活用するかが重要となります。有効活用できる場合は発行を用いた合成法が最もコストが低くなり、さらに環境にも優しい合成法です。

プロパンジオールの使用用途

プロパンジオールの使用用途は種類ごとに下記の通りです。

1. 1,2-プロパンジオール

水よりも低い融点、高い沸点を生かして、溶剤や不凍液、熱媒や冷媒として利用されています。また、生物への毒性が低いことを利用して保湿剤、潤滑剤、防カビ剤などの食品添加物としても利用されます。

医薬品としては、駐車剤や内服薬、外用薬の溶解補助剤として調剤に用いられることがあります。工業的には、樹脂を合成する際の中間原料としても用いられてきました。また、有機化学においては、ピナコール転移を利用したケトンの合成に用いられます。

2. 1,3-プロパンジオール

酸触媒の存在下でカルボニル化合物と反応させることによって、6員環のアセタールを合成することができます。アセタール構造に変換することでカルボニル炭素の反応性を抑えることができるため、カルボニル炭素の保護基として用いられています。エチレングリコールを使用することで5員環のアセタールを合成することもでき、保護基の使い分けが可能になります。

また、肌や眼への刺激が非常に小さく、保湿性と抗菌性をあわせもっていることから、化粧品やヘアケア製品、ボディ、ハンドケア製品、保湿剤、感触改良剤に配合されることもあります。近年ではこの物質は植物油由来のグリセリンから作られているため、天然物由来の化粧品として非常に人気があります。工業的には溶媒や接着剤に用いられたり、ポリエステルの原料としても使用されることが多いです。

プロパンジオールのその他情報

法規情報

プロパンジオールは燃えやすく、消防法において危険物第4類、第3石油類に分類されています。引火点は99℃なので常温で引火することはないですが、火気の近くでの取扱は厳禁です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/96-24-2.html

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