カルバゾール

カルバゾールとは

カルバゾールの基本情報

図1. カルバゾールの基本情報

カルバゾールとは、化学式がC12H9Nで表される複素環式化合物です。

ジベンゾピロール (英: dibenzopyrrole) とも呼ばれます。1872年にコールタール中から発見されました。また、原油にも含まれていることが知られています。カルバゾールの精製には、コールタールの分留で得られるアントラセン油を用います。このアントラセン油からカルバゾールを分離精製して得ることが可能です。

カルバゾールの使用用途

カルバゾールの使用用途は多岐に渡り、主なものとして、染料、プラスチックの合成原料、写真乾板、有機エレクトロルミネッセンスなどが挙げられます。カルバゾールには光導電性を有する誘導体が存在します。光導電性を活かして、複写機の感光ドラムに初めて利用されました。

また、カルバゾールを基本骨格とするカルバゾールアルカロイドも多数存在し、抗菌作用、抗酸化作用、抗腫瘍作用など様々な有用性を持つことが知られています。例えば、カルベジロール (英: Carvedilol) は降圧剤として、カルプロフェン (英: Carprofen) は動物用の抗炎症剤として、カルバゾマイシン (英: Carbazomycin) は農薬として使用可能です。

カルバゾールの性質

カルバゾールの融点は246.3°C、沸点は354.69°C、引火点は220°Cです。アセトンには溶けますが、水には溶けません。

カルバゾールの窒素原子は、電子を放出しやすいです。窒素からベンゼン環の対角線の方向に電子求引基を導入すると、分子が電気双極子を持ちます。

カルバゾールの構造

カルバゾールは窒素原子を持つ複素環式化合物であり、分子量が167.206の無色の結晶です。

ピロールの2,3-位と4,5-位にベンゼン環が1個ずつ縮合した構造を有しています。水素の位置の違いによって互変異性体が考えられますが、窒素上に水素を有する9H-カルバゾールのことを通常指します。

カルバゾールのその他情報

1. 古典的なカルバゾールの合成法

カルバゾールの合成

図2. カルバゾールの合成

ブヘラのカルバゾール合成 (英: Bucherer carbazole synthesis) は、古典的な合成法です。亜硫酸水素ナトリウムを用いて、アリールヒドラジン (英: arylhydrazine) とナフトール (英: naphthol) の反応によって、カルバゾール類が生成します。

2. ボルシェ・ドレクセル環化によるカルバゾールの合成

実験室でカルバゾールは、ボルシェ・ドレクセル環化 (英: Borsche–Drechsel cyclization) を用いて合成されています。

この反応では、まずフェニルヒドラジン (英: phenylhydrazine) とシクロヘキサノン (英: cyclohexanone) を縮合させることで、ヒドラゾン (英: hydrazone) を得ることが可能です。次に触媒に塩酸を使用した転位反応と閉環反応によって、テトラヒドロカルバゾール (英: tetrahydrocarbazole) を合成します。最後に四酸化三鉛 (Pb3O4) を使った酸化によって、カルバゾールが生成します。

3. グレーベ・ウルマン反応によるカルバゾールの合成

グレーベ・ウルマン反応 (英: Graebe–Ullmann reaction) によっても、カルバゾールを合成可能です。この反応では、まずN-フェニル-1,2-ジアミノベンゼン (英: N-phenyl-1,2-diaminobenzene) がジアゾニウム塩になった後、即座に1,2,3-トリアゾール (英: 1,2,3-triazole) に変換されます。1,2,3-トリアゾールは不安定であり、温度を上昇させると窒素が脱離して、カルバゾールが得られます。

4. カルバゾールの関連化合物

カルバゾールの関連化合物

図3. カルバゾールの関連化合物

カルバゾールの関連化合物として、ピロールやインドールがあります。ピロールは五員環構造を有する複素環式芳香族化合物のアミンであり、インドールはピロール環とベンゼン環が縮合した構造を持っています。

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