ウラシルとは
ウラシルとは、化学式C4H4N2O2で表せられる塩基で、リボ核酸 (RNA) を構成する4つの塩基のうちの1つです。
RNA中の塩基配列では、ウラシルはUで表されます。また、ウラシルは、分子量112.09で、無色の固体です。
アデニン、グアニン、シトシンといった塩基は、DNAとRNAの両方に含まれますが、ウラシルはRNAのみに存在します。DNAの塩基配列をもとにRNAが合成される際に、DNA中のチミンの配置にウラシルが置き換わることで、DNAの塩基配列がRNAに転写されます。
ウラシルの使用用途
ウラシルは、RNAのピリミジン塩基の1つであり、RNAの構成要素として重要な役割を持ちます。RNAは、遺伝子情報の伝達やタンパク質の合成に必要な分子であり、ウラシルはDNAの塩基配列をもとにRNAが転写される際に使用されます。
また、ウラシルは抗がん剤や核酸医薬品の合成原料として医薬品分野で広く使用されている物質です。ウラシルの5位にフッ素を導入した物質は、抗がん剤フルオロウラシル (5-FU) として使われています。フルオロウラシルは、胃がん、肝がん、卵巣がんなど幅広いがん種に抗腫瘍効果をもたらします。
ウラシルの性質
ウラシルは、RNAの4つの核酸塩基のうちの1つです。白色の粉末状の有機化合物で、分子式C4H4N2O2を持ちます。ウラシルは水に微溶、アルコールに可溶です。
酸化やニトロ化、アルキル化などの反応を容易に起こします。フェノールと次亜塩素酸ナトリウムの存在下では、ウラシルは紫外線で可視化できることが知られています。RNAでは、ウラシルはアデニンと塩基対を形成し、DNA転写時にチミンと置き換えられます。チミンは、ウラシルのメチル化によって生成されます。
ウラシルはアデニンと塩基対を形成する際、水素結合受容体としても水素結合供与体としても機能します。
- 化学式: C4H4N2O2
- 分子量: 112.09g/mol
- 外観: 白色の結晶性粉末
- 融点: 335〜338℃
- 沸点: 440℃
ウラシルの構造
ウラシルは、シトシンやチミンと同様に、ピリミジン環を持つ塩基です。リボース糖やリン酸に容易に付加され、リボヌクレオシドであるウリジンを形成します。
さらに、ウリジンがリン酸化されると、ウリジン一リン酸 (UMP) 、ウリジン二リン酸 (UDP) 、ウリジン三リン酸 (UTP) が生成されます。これらの分子はそれぞれ体内で生合成され、生命機能の維持に重要な役割を有しています。
ウラシルが無水ヒドラジンと反応すると、ウラシル環が開環することが OOいられています。このとき、反応のpHが10.5以上になると、ウラシルアニオンが形成され、反応がより遅くなります。
pHが低下した場合でも、ヒドラジンのプロトン化によって同様に反応は遅いです。ウラシルの反応性は、温度が変化しても変わりません。
ウラシルのその他情報
フルオロウラシルの作用機序
フルオロウラシルは、フッ化ピリミジン系の代謝拮抗剤で、抗がん剤として使用されます。古くからある薬剤で、後発医薬品も多数流通しています。
1990年代よりフルオロウラシルのプロドラッグ化などの改良を施し、より強い効果が期待される薬剤が開発されています。フルオロウラシルは、ウラシルの5位水素原子がフッ素原子に置き換わった構造をしています。
体内でリン酸化され、活性本体である5-フルオロデオキシウリジン-5’-一リン酸 (FdUMP) に代謝されます。このFdUMPがDNAに組み込まれることで、DNA合成が阻害され、がん細胞の増殖を抑制します。
また、FdUMPがチミジル酸シンターゼ (TS) 活性を阻害することにより、細胞内でのチミンの合成が阻害され、DNAが作れなくなるという作用機序も有しています。フルオロウラシルは体内で5-フルオロウリジン三リン酸 (FUTP) に代謝され、UTPの代わりにRNAに組み込まれることで、RNAプロセシングおよび、mRNA翻訳を妨げます。