イソプロピルアンチピリン

イソプロピルアンチピリンとは

イソプロピルアンチピリンは、分子量230.306で、化学式C14H18N2Oで表せられる化学物質です。イソプロピルアンチピリンは、別名でプロピフェナゾンとも呼ばれます。

イソプロピルアンチピリンの働きとしては、プロスタグランジンに対する合成阻害作用を有します。

炎症や痛みに関与する生理活性物質であるブラジキニンによる痛みの作用は、プロスタグランジンにより増強されることが知られています。イソプロピルアンチピリンは、このプロスタグランジンを阻害することで、ブラジキニンに対するプロスタグランジンの痛み増強作用を抑制します。

イソプロピルアンチピリンの使用用途

上記の通り、イソプロピルアンチピリンは、ブラジキニンに対するプロスタグランジンの増強作用を抑制するため、解熱鎮痛剤として使用されています。イソプロピルアンチピリンは、医療用医薬品として使用されるだけでなく、市販の風邪薬にも配合され、広く使用されています。

イソプロピルアンチピリンの副作用として、ショック、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症などが報告されています。そのため、イソプロピルアンチピリンは、いくつかの国では製造が禁止されています。日本では、重篤な副作用の発生件数は、医療用医薬品で年間1万人当たり0.03-0.3件となっています。このデータに基づき、イソプロピルアンチピリンによるリスクは高くはないと判断されています。

イソプロピルアンチピリンの性質

イソプロピルアンチピリンの融点は103℃~105℃、沸点は約372℃で、常温では固体です。イソプロピルアンチピリンは、水にはわずかにしか溶けませんが、酢酸には極めて溶けやすく(100%)、エタノール(96%)や塩化メチレンにも溶けやすいです。ただし、高温や強酸、強アルカリに対して不安定で、分解することがあります。

薬理学的な作用としては、プロスタグランジン合成を阻害することで、解熱・鎮痛・抗炎症作用を示します。また、血小板凝集抑制作用も持っています。プロスタグランジンは頭痛や生理痛の原因となる物質の一つです。

また、イソプロピルアンチピリンには解熱効果があります。体温調節中枢に作用して皮膚血管を拡張し、熱の放散を促します。

イソプロピルアンチピリンの構造

イソプロピルアンチピリンは、ピラゾロン骨格を持つ化合物で、イソプロピル基とベンゼン環を有しています。ピラゾロンは、五員環の構造を持つピラゾリンという化合物から、水素原子の一つがカルボニル基に置き換わったものを指します。ピラゾリンは、五員環の隣り合った二つの位置に窒素原子を持つ複素環式化合物です。

イソプロピル基はプロパン(CH3CH2CH3)の中央の炭素から水素を1個除去した形のアルキル基です。「イソプロピル」の「イソ」とは「アルキル基の末端に分岐がある」ことを意味しています。

ベンゼン環は、6個の炭素原子からなる環状構造です。ベンゼン環をもつ化合物を総称して芳香族化合物と呼びます。したがって、イソプロピルアンチピリンは芳香族化合物の一種です。

イソプロピルアンチピリンのその他情報

1.  イソプロピルアンチピリンの安全情報

イソプロピルアンチピリンのようにピラゾロン骨格を基本骨格とする解熱鎮痛薬は、ピリン系解熱鎮痛薬といわれています。ピリン系解熱鎮痛薬は、効き目も強く作用時間も長いのですが“ピリン疹”といわれる発疹や、浮腫、造血障害などの副作用があるため、注意が必要です。

イソプロピルアンチピリンの副作用として、ショック、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症などが報告されています。そのため、イソプロピルアンチピリンは、いくつかの国では製造が禁止されています。日本では、重篤な副作用の発生件数は、医療用医薬品で年間1万人当たり0.03-0.3件となっています。このデータに基づき、イソプロピルアンチピリンによるリスクは高くはないと判断されています。

イソプロピルアンチピリンが禁止されている国は、スリランカ、マレーシア、タイ、トルコなどです。日本をはじめイタリア、ドイツ、スペイン、南米、インド、パキスタン、インドネシア等では使用されています。

参考文献
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001le8l-att/2r9852000001len4.pdf

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