硫酸ナトリウムとは
硫酸ナトリウムとは、化学式がNa2SO4である硫酸と水酸化ナトリウムとの塩です。
別名で芒硝 (ぼうしょう) とも呼ばれ、特に含水塩 (10水和物: Na2SO4・10H2O) と区別する場合には、Na2SO4を無水芒硝と呼び、含水塩は結晶芒硝と呼ばれます。
硫酸ナトリウムの使用用途
硫酸ナトリウムは、不燃性であり、人体への有害性もほとんどないことから、食品添加物や医薬用、試薬用、工業用として幅広く使用されています。工業用には、ガラスやパルプを製造するときの原料の1つとして用いられたり、硫化ナトリウムの製造原料として用いられたりします。吸湿性が高い特徴を活かし、乾燥剤などにも使用可能です。
生活用品向けには、中性洗剤の洗浄力を向上させるための補助剤 (ビルダー) として利用されたり、入浴剤の原料の1つして使われたりします。その他の用途としては、鉱山製錬、染色、染料の中間物、医薬品、沈降性硫酸バリウムなどの製造に使用されています。
硫酸ナトリウムの性質
硫酸ナトリウムには、含水塩である10水和物 (Na2SO4・10H2O) と無水物 (Na2SO4) があると前述しましたが、それぞれで性質は異なります。
1. 結晶性芒硝 (Na2SO4・10H2O)
分子量は322.21で比重は1.46です。水によく溶け、32.4℃で10水和物から無水物に転移します。32.4℃までの水への溶解度は温度上昇に伴い上昇しますが、32.4℃以上では温度上昇に伴い溶解度が減少します。
グリセリンに可溶でアルコールには不溶、風解性があります。100℃で結晶水を失います。
2. 無水芒硝 (Na2SO4)
分子量は142.04で比重は2.698です。融点は884℃でグリセリンに可溶でアルコールには不溶です。見た目は、無色または白色で、結晶状もしくは結晶性粉末の固体となっています。
吸湿性が高いのが特徴で、アルミニウム、マグネシウムとの混合や接触を避ける必要があります。
硫酸ナトリウムのその他情報
硫酸ナトリウムの製造方法
硫酸ナトリウムは、天然から直接産出されています。アメリカ、中国で、結晶芒硝や復塩 (硫酸ナトリウムと硫酸カルシウムの混合物) として産出されています。
工業的には、レーヨンやその他の工業製品の製造の際に副生する、純度の低い硫酸ナトリウムを精製して、純度の高い硫酸ナトリウムを製造する方法が一般的です。原料として、レーヨン製造時の副生物である人絹芒硝やそれ以外の工業製品の副生物である副生芒硝が用いられており、国内では主に人絹芒硝を原料に硫酸ナトリウムが作られています。
人絹芒硝を原料として使用する場合、人絹芒硝にソーダー灰を加えて、過剰の硫酸を中和し、加熱濃縮して、硫酸ナトリウムを析出させます。これをさらに脱水、乾燥、粉砕し、硫酸ナトリウムを精製します。
1. 人絹 (レーヨン)
Cellulose + NaOH → ビスコース
ビスコース + H2SO4 → ビスコースレーヨン + Na2SO4
セルロースを水酸化ナトリウムで溶解させてビスコースを作ります。ビスコース液を希硫酸中で繊維状に析出させてビスコースレーヨンができます。この中和反応の際に硫酸ナトリウムが生成します。繊維を回収した後の残渣が人絹芒硝です。
2. 重クロム酸ソーダの製造
2Na2CrO4 + H2SO4 → Na2Cr2O7 + Na2SO4 + H2O
3. 過塩素酸アンモニウムの製造
(NH4)2SO4 + 2NaClO4 → 2NH4ClO4 + Na2SO4
4. ホウ酸の製造
Na2B4O7 + H2SO4 + 5H2O → 4H3BO3 +Na2SO4
5. ギ酸の製造
2HCOONa + H2SO4 → 2HCOOH + Na2SO4
参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7757-82-6.html