ヨウ素酸カリウム

ヨウ素酸カリウムとは

ヨウ素酸カリウムとは、化学式KIO3で表されるヨウ素酸塩類の1種です。

無色の結晶で水には溶けやすいですが、エタノールには溶けません。常温では安定であり、加熱するとヨウ化カリウム (KI) と酸素に分解します。

ヨウ素酸カリウムは、ヨウ素を水酸化カリウムと反応させるか、あるいはヨウ化カリウム溶液を電気分解することによって製造されます。化学の「ヨウ素デンプン反応」の呈色実験で、チオ硫酸ナトリウム等とともに使用されます。

ヨウ素酸カリウムの使用用途

ヨウ素酸カリウムは、強力な酸化剤であり、ヨウ素還元滴定などの化学分析において酸化剤として利用されます。

その他、医療用途では放射線障害の予防薬やヨウ素不足による甲状腺機能障害の治療薬として用いられています。

1. 食品関連

ヨウ素酸カリウムは、海外の食品ではヨウ素不足予防のための栄養補助食品として、粉ミルクや食塩に添加されており、国内では牛や豚・鶏など産業動物の飼料の栄養成分 (ヨウ素、カリウム) 補給のために飼料添加物として使用されます。

また、パン生地の品質を安定させるパン生地改良剤としても有用です。パン生地改良剤は酸化剤であり、主にグルテンに含まれるチオール基 (SH基) を酸化することでジスルフィド結合 (S-S結合) の形成を促進します。これにより、生地の伸展性が向上し、パン容積が増大し、食感が改善されます。

2. 放射線対策

ヨウ素酸カリウムは、ヨウ化カリウムと共に安定ヨウ素剤として使用することができます。安定ヨウ素剤は、放射線被ばくによる癌の予防に効果があります。

ヨウ素は甲状腺に集積されやすいという傾向がありますが、放射性ヨウ素に被ばくする前の24時間以内、または被ばくした直後に安定ヨウ素剤を服用すると、甲状腺への放射性ヨウ素の集積を90%以上減らすことが可能です。甲状腺がん発生の予防に効果があるとされています。

原子力災害における放射性ヨウ素の放出は、体内に取り込まれると甲状腺に蓄積し、内部被ばくによる甲状腺がんなどが発生する恐れがあります。それに対して、安定ヨウ素剤の服用は放射性ヨウ素が甲状腺に蓄積するのを防ぎ、甲状腺による放射線被ばくを減少させることが目的です。

ただし、安定ヨウ素剤の服用は、甲状腺以外の臓器における内部被ばくや、クリプトン、キセノンなどの放射性希ガスによる外部被ばくに対しては効果がありません。

ヨウ素酸カリウムの性質

ヨウ素酸カリウムは、常温では無色澄明の液体で、水に溶けやすく (4.7g/100ml 0℃) 、水溶液は中性です。アルコール、液体アンモニア、硝酸には溶けにくい性質を持っています。

融点は560℃で、部分的に分解して溶け、酸素を放出します。強い酸化性があり、可燃物 (紙、布、木、油など) を発火させる恐れがあります。

ヨウ素酸カリウムのその他情報

1. ヨウ素酸カリウムの製造方法

ヨウ素酸カリウムは、水酸化カリウムなどのカリウム含有塩基をヨウ素酸と反応させることによって生成できます。

   HIO3 + KOH → KIO3 + H2O

また、熱い水酸化カリウムの濃縮溶液に ヨウ素を加えることによっても調製できます。

   3I2 + 6KOH → KIO3 + 5KI + 3H2O

ヨウ化カリウムを塩素酸カリウム、臭素酸カリウム、または過塩素酸カリウムと融合させることによって溶融物を水で抽出し、結晶化によって溶液からヨウ素酸カリウムを単離します。

   KI + KClO3 → KIO3 + KCl

2. ヨウ素酸カリウムの安全性情報

ヨウ素酸カリウムは強い酸化剤であるため、可燃性物質や還元剤と接触すると、火災を引き起こす可能性があります。また、ヨウ素酸カリウムを有機物などの可燃性物質と混ぜて加熱したり、衝撃を与えたりすると、爆発の危険性が高いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です