ポリビニルピロリドンとは
ポリビニルピロリドンとは、N-ビニル-2-ピロリドンが重合した非イオン性の水溶性高分子です。
別名として、Poly (N-vinylpyrrolidone)、PVP、ポビドンとも呼ばれます。ポリビニルピロリドンは、工業品から日用品、食品など多岐に渡って用いられています。
ポリビニルピロリドンの使用用途
ポリビニルピロリドンは、多くの合成高分子化合物と異なり水によく溶けるので、この性質を利用して様々な用途に用いられます。さらに、高吸湿性、成膜性、接着性、分散性などの特徴のほか、人体や環境への安全性の高さから医薬品や食品添加物へも使用されています。
1. 医薬品
日本薬局方第二部に収載され、消毒薬のポピドンヨードの原料、錠剤やカプセルを製造する際のバインダー、懸濁液やエマルションの安定化剤、軟膏やクリームの基剤などに用いられています。また、人口腎臓に用いられる中空糸の血液適合性を向上させるために、中空糸の素材にポリビニルピロリドンがブレンドされています。
2. 食品添加物
ビタミン、ミネラル製品の安定剤、バインダ、分散剤として使用されています。また、ポリビニルピロリドンのピロリドン部分を架橋したポリビニルポリピロリドン (PVPP) と名称の高分子があり、ビール、ワインなどの清澄剤、茶系飲料の渋味低減剤などに用いられています。ポロビニルピロリドンが水溶性に対して、PVPPは非水溶性です。
ポリビニルピロリドンの性質
N-ビニル-2-ピロリドン (C6H9NO) が直鎖状に重合した、吸湿性の非結晶性の高分子です。無臭またはわずかな特異臭があります。密度は1.2g/cm3、融点 (ガラス転移温度) は150~180℃、分解温度は約400℃です。
水、アルコールに可溶で、ピリジン、クロロホルムなど、ほとんどの極性溶媒に溶解します。また、他の高分子との相溶性も高い性質があります。反面、アセトンには溶けにくく、エステル、エーテル、炭化水素系の溶媒にはほとんど溶けません。
人体や環境への安全性が高いことから、幅広い用途で用いられています。また、非イオン性ポリマーであるため、電気伝導性が低く、絶縁性にも優れています。
ポリビニルピロリドンのその他情報
ポリビニルピロリドンの製造方法
ポリビニルピロリドンは、アセチレンとホルムアルデヒドを原料にして、以下の工程を経て生産されます。
1. γ-ブチロラクトンの合成
アセチレンとホルムアルデヒドを加圧下で反応させた後、接触還元することで1,4-ブタンジオールが得られます。これを銅触媒下で200℃に加熱すると分子内で脱水反応が起こり、γ-ブチロラクトンが得られます。
C2H2 + HCHO → HOCH2CH2CH2CH2OH (1,4-ブタンジオール) → C4H6O2 (γ-ブチロラクトン)
2. N-ビニル-2-ピロリドンの合成
γ-ブチロラクトンをアンモニア処理して、2-ピロリドンとし、これに加圧アセチレンを作用させることで、N-ビニル-2-ピロリドンが得られます。
C4H6O2 + NH3 → C4H7NO (2-ピロリドン)
C4H7NO + C2H2→ C6H9NO
γ-ブチロラクトンからN-ビニル-2-ピロリドンを合成する方法は上記の他にもモノエタノールアミンと反応させて合成する方法もあります。こちらは、γ-ブチロラクトンとモノエタノールアミンからN-ヒドロキシエチルピロリドンを生成します。これを気相脱水させることで、N-ビニル-2-ピロリドンが得られます。
C4H6O2 + HOCH2CH2NH2 → C6H11O3 (N-ヒドロキシエチルピロリドン)
C6H11O3 → C6H9NO + H2O
3. N-ビニル-2-ピロリドンの重合
N-ビニル-2-ピロリドンを過酸化水素存在下で加熱して重合してビニルピロリドンが得られます。
参考文献
https://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20061219te1&fileId=105