ホウ酸

ホウ酸とは

ホウ酸とは、ホウ素のオキソ酸の総称で一般的にオルトホウ酸のことです。

ホウ酸自体は水中、土壌、植物など自然界のあらゆるところに存在している物質ですが、工業的にはルドイヒ石、コレマナイト、ウレキサイトなどの天然のホウ酸塩鉱物から精製されます。

外観は無色または白色の結晶で臭いはありません。水やエタノールにやや溶けやすく、ジエチルエーテルにはほとんど溶けません。不燃性で水溶液は弱酸性を示します。

ホウ酸の使用用途

1. ホウ酸の害虫駆除剤

昆虫はその体内にホウ酸が取り込まれると体外に排出できません。結果としてホウ酸の毒素が蓄積します。その特異性を利用して主にゴキブリなどの害虫駆除剤が作られています。

家庭でも駆除剤を作製することができ、「ホウ酸団子」と呼ばれています。小麦粉や玉ねぎなどの誘引剤とホウ酸を混ぜて団子状に成形し、害虫の発生箇所に設置します。害虫は脱水症状を起こし、駆除することができます。また、ホウ酸は建築分野でも建材の防腐、防アリ処理に使用されています。

2. ホウ素の肥料

植物育成に必要な微量元素としてホウ素がありますが、農業の分野ではホウ素肥料としてホウ酸やホウ砂が用いられています。

土壌中は中性付近のpHであり、無電荷のB(OH)3として存在しますが、植物内ではpHに応じて一部はB(OH)4として存在します。ホウ酸は多糖類などとエステル結合を形成し、細胞壁の構造を維持するなど、植物の成長に重要な役割を果たします。

3. その他

ホウ酸には殺菌作用があるため、その水溶液は眼の洗浄・消毒液として利用されています。また、中性子を吸収する性質があるため、原子炉施設内では中性子の量を調節する制御材として使用されています。

ホウ酸の性質

1. 基本性質

ホウ酸は、化学式H3BO3で表される無機化合物であり、ホウ素と水素と酸素から構成されています。分子量は61.83、比重は1.5で、融点は170.9 ℃です。

ホウ酸分子は、ホウ素原子を中心に3つの水酸基に結合し、平面三角形の構造です。大量に摂取すると健康に悪影響を与えることがあるため、注意が必要です。致死量は乳児で2~3 g、幼児で5~6 gとされています。

2. 反応

ホウ酸は、水に溶ける性質があり、0.1 mol/LでpH5.1です。ホウ酸は弱いルイス酸で、プロトンを供給するのはホウ酸と水からできる錯体のH2OB(OH)3です。

100~150 ℃で1分子の水を失ってメタホウ酸 (HBO2) となり、140~160 ℃でピロホウ酸 (H2B4O7) とガラス状になり、高温で無水ホウ酸 (B2O3) となります。無水ホウ酸にマグネシウムを加えて約1,000 ℃に加熱すると、褐色の無定型ホウ素が得られます。

ホウ酸が、硫酸の存在下でアルコールと反応すると、B(OR)3のホウ酸エステルが生成します。ホウ酸が生成する反応として、塩化ホウ素 (BCl3) と水の反応が挙げられます。

ホウ酸のその他情報

ホウ酸の製造方法

原料によってホウ酸の製造方法はやや異なります。

1. ホウ砂からの製造法
ホウ砂液に硫酸を加えて反応させ、ホウ酸と硫酸ナトリウムが生成します。反応液を冷却し、遠心分離、乾燥を経て製品をえます。この方法で製造したホウ酸は非常に品質が高く、品質要求の厳しい医薬品や化学工業向けに製造されます。

2. ホウ酸塩鉱物からの製造法
ホウ酸塩鉱物のスラリーに硫酸または塩酸を加え、ホウ酸塩を分解してホウ酸を生成します。ホウ酸塩鉱物として、コレマナイトやウレキサイトなどが挙げられます。

3. マグネシウム系ホウ酸塩鉱物からの製造方法
マグネシウム系ホウ酸塩鉱物を焙焼して結晶水を除去し、炭酸水素アンモニウムを添加してホウ酸アンモニウムを生成します。ろ過分離したのち、加熱分解してアンモニアを蒸発除去し、冷却してホウ酸の結晶を得ます。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/10043-35-3.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です