元素分析装置

元素分析装置とは

元素分析装置とは、化学物質を構成する元素の種類(定性分析)構成比率(定量分析)を決定する装置です。

物質は全て元素から構成されているため、元素の種類と比率を明確にすることは物質の性質を知る上で非常に重要な項目の一つとなります。

物質は大きく有機物と無機物に分けられます。有機物は、炭素を含む化合物の多くを指します。元素分析によって、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、窒素(N)といった元素の含有率を求めることで有機物の組成式を導くことができます。

一方、無機物は有機物以外と定義され、金属元素や非金属元素、水素化物、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、金属錯体などがあります。元素分析によって、ナトリウム(Na)やカリウム(K)といった金属元素、ホウ素(B)やケイ素(Si)といった非金属元素、塩素(Cl) やフッ素(F)といったハロゲンなどを定性、定量します。

対象の物質(有機物か無機物か)や元素の種類、物質の状態(液体、固体)などによって、様々な分析方法があります。

元素分析装置の使用用途

元素分析は様々な化学物質を分析対象としているため、幅広い分野で使用されています。代表例は下記の通りです。

  • 環境分野
    土壌の養分分析や肥料の化学組成の把握など
  • 食品分野
    食品に含まれる栄養の評価など
  • 製薬分野
    医薬品の組成や純度の把握など
  • 材料分野
    品質管理や材料の組成把握など

元素分析の種類

1. 有機物の元素分析

有機物の元素分析は、サンプル中の炭素などの元素を測定容易な物質に変換し、その後、それぞれ適当な方法で定量するという手順で行います。

まず、元素を変換する方法としては、キャリアーガス中でサンプルを燃焼させる方法と、液体中で分解剤を加えて行う湿式法があります。様々な分析手法がありますが、以下に代表的な分析法を示します。

炭素と水素に関して、キャリアーガスに酸素を使用し、サンプルを完全燃焼させて炭素をCO2に、水素をH2Oに変換した後、適当な方法で捉えて定量します。窒素は、サンプルを二酸化炭素気流中で燃焼補助剤と共に完全燃焼させてN2に変換した後、体積を測定することで分析できます。

また、サンプルに分解剤を加えてアンモニアに変換した後、補修剤を用いて捉え定量する方法もあります。酸素は他元素の百分率の総和から計算します。

2. 無機物の元素分析ー液体試料の場合

イオンクロマトグラフィー(IC)は、液体クロマトグラフの一種であるイオンクロマトグラフを用いて、主に溶液中のイオン性成分の定性・定量を行う分析手法です。測定対象成分は、無機陰イオンやアルカリ金属、アンモニアなどがあります。

高周波誘導結合プラズマ(ICP)を用いる分析手法も知られており、ICP発光分光分析法(ICP-AES)とICP質量分析法(ICP-MS)があります。いずれも水溶液サンプル中の約70種類の元素を一斉に測定することが可能で、広く活用されている分析方法です。サンプルが固体の場合は、分解や抽出により水溶液にすることで分析が可能となります。

ICP-MSでは、イオン化源としての誘導結合プラズマ(ICP)に水溶液試料を霧化・導入し、プラズマ中でイオン化した元素を質量分析計で分離・検出することで元素分析を行います。

一方、ICP-AESでは、水溶液試料を霧化・導入した後、励起された元素が基底状態に戻る際に放出される光を分光して、波長から元素の定性、強度から定量を行います。ICP-AESが不得意とする希土類などは、ICP-AES分析が適しています。ICP-AESとICP-MSを併用して分析を行うことにより、主成分~微量成分まで幅広い濃度範囲の元素情報が得られます。

原子吸光分析法(AAS)は、希酸水溶液中の元素を原子化し、そこに光を照射し、光の吸収(吸光度)から元素濃度を測定します。全ての原子は、外から光エネルギーを与えられると、低エネルギー状態 (基底状態) から高エネルギー状態(励起状態)に遷移しますが、基底状態と励起状態のエネルギー差は元素によって決まっています。そのため、吸光度を測定すれば、元素の定性・定量が行えることになります。

3. 無機物の元素分析ー固体表面の分析

蛍光X線分析法(XRF)は、測定サンプルにX線を照射して発生する固有の蛍光X線を測定することで、構成されている元素の同定と定量が行えます。特殊なサンプルを除いて、前処理が不要、非破壊で分析可能、固体表面の分析も可能という特徴があります。

サンプルにX線を照射後、発生する蛍光を測定するのですが、検出システムの違いによって、エネルギー分散型システム(EDXRF)と波長分散型システム(WDXRF)に分けられます。WDXは、発生した蛍光X線を分光結晶によって分光し、これをゴニオメーターを用いて計測するため、装置が大型になります。一方、EDXは検出器自体のエネルギー分解能が優れているため、分散系が不要となり、装置が小型になります。

4. 固体炭素分析

固体試料中の炭素分析においては、全有機炭素(TOC)、全無機炭素(TIC)、元素状炭素(ROC)の3形態の定量を行い、そこから全炭素量(TC)を算出する手法が注目されています。

環境モニタリングや品質管理の上で重要なTOCは代表的な測定項目ですが、従来のTOC計を用いた分析手法ではTCからTICを差し引いてTOCを算出するという分析手法が取られてきました。一方、カーボンニュートラル施策の一環である、CO2排出量の削減、もしくは排出されたCO2の資源化を目的としたカーボンリサイクル関連技術の開発では、3種類の異なる炭素形態の分別定量のニーズが高まっています。

参考文献
https://www.thermofisher.com/jp/ja/home/industrial/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/63/12/63_612/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/60/12/60_KJ00008548707/_pdf/-char/ja

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