グルコン酸

グルコン酸とは

グルコン酸の基本情報

図1. グルコン酸の基本情報

グルコン酸 (Gluconic acid) とは、化学式C6H12O7で表される有機化合物であり、グルコースの1位の炭素を酸化することによって生成するカルボン酸です。

光学活性化合物であり、天然にはD体のみが存在します。アルドン酸 (単糖を酸化して得られる誘導体のうち、アルドースの1位のホルミル基がカルボキシル基に変わったカルボン酸) の1種でもあります。

CAS登録番号は、D体が526-95-4、ラセミ体が133-42-6です。

グルコン酸の使用用途

1. 食品分野

グルコン酸は不揮発性であること、酸味度が低いという特徴から、食品添加物として使用されています。主な用途は、米飯、餅等の米加工品に対するpH調整剤や、各種飲料、漬物、ドレッシング、タレ等に対する調味料及びpH調味料です。

食品に使用される場合には、「酸味料」、「水素イオン濃度調整剤」又は「pH調整剤」、もしくは「グルコン酸」などの表記で表示されています。また、グルコン酸の塩類であるグルコン酸カリウム及びグルコン酸ナトリウムも同様に食品添加物として使用されている物質です。

例えば、パン、味噌、醤油等の製造における食塩の加工機能の代替、魚肉すり身の冷凍保存時のタンパク質変性の防止等の目的に使用されています。米国では、甘味料のサッカリンナトリウムの呈味改善剤としても使用されております。

  • カルシウム塩: 安定剤
  • 乳酸グルコン酸カルシウム: カルシウム剤
  • グルコン酸鉄: オリーブの黒味

2. 医療分野

医療分野では、主に鉄の欠乏症に対する薬として利用されています。取り込まれたグルコン酸イオンには体内の金属イオンを効果的に吸収されやすくする作用があります。

また、フッ化水素で薬傷を受けた際にはグルコン酸カルシウムの軟膏が有効です。グルコン酸塩として取り込まれたカルシウムイオンには、溶解性のフッ化物イオンと結合して不溶性のフッ化カルシウムを形成し、無毒化する作用があります。また、キニーネとの塩は筋肉注射の形でマラリア治療薬として使われ、亜鉛塩は雄イヌの去勢に使われる物質です。

3. 工業分野

工業分野では、金属塩の沈殿の除去や金属を洗浄する際に弱い酸として使われることもあります。

グルコン酸の性質

グルコン酸の平衡

図2. グルコン酸の平衡

グルコン酸は酸性の溶液に溶かすことにより、容易に脱水して環状エステルであるグルコノデルタラクトン (D-(+)-グルコン酸-δ-ラクトン) へと変化する物質です。また、溶液から遊離酸の単離を試みる場合にも、容易に脱水が起こります。水溶液中ではこの化合物との平衡混合物として存在しているため、純粋なものは塩の形でしか得ることができません。

また、強力なキレート剤としての性質を有し、特にアルカリ性の溶液中でよく作用します。具体的には、カルシウム、鉄、アルミニウム、銅やその他の重金属イオンにキレート配位することが知られています。

なお、グルコン酸は、自然界では特に蜂蜜、ローヤルゼリーに多く含まれています。その他には、大豆、米、椎茸などや、発酵食品であるワイン、味噌、醤油、醸造酢などに含有されます。ビフィズス菌を増やすことが知られている唯一の有機酸です。柔らかな酸味を有し、腐食性、刺激性があります。

グルコン酸の構造

グルコン酸の構造

図3. グルコン酸の構造

グルコン酸の分子量は196.155、融点は131 ℃であり、常温では無色の結晶です。密度は1.23g/mL、酸解離定数pKaは3.86です。水に容易に溶解します。水への溶解度は316 g/Lです。

グルコン酸は、6個の炭素鎖の末端にカルボキシル基を持ち、また2番目から6番目の炭素原子に1個ずつ計5個のヒドロキシ基を持つ構造をしています。

グルコン酸の種類

グルコン酸は、主に研究開発用試薬や産業用原料として販売されています。どちらも通常50%程度の水溶液です。

研究開発用試薬製品は、25g、500gなどの容量の種類があります。実験室で取り扱いやすい容量での提供です。断りなく「グルコン酸」と表記される場合、通常はD-グルコン酸を指します。

産業用原料として販売される場合、通常酸味料・pH調整剤などの食品添加物原料としての提供が中心です。20kgや250kgなど、工場などでの需要に合わせた大容量で販売されています。こちらも通常はD-グルコン酸を指します。

グルコン酸のその他情報

グルコン酸の生合成

グルコン酸は、グルコースの生体内での代謝経路の1つであるホスホグルコン酸経路で生成されます。ブドウ糖を還元した物質が糖アルコールのソルビトールであるのに対して、ブドウ糖を酸化した物質が、糖酸であるグルコン酸です。

参考文献
https://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.display?p_card_id=1738&p_version=2&p_lang=ja

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です