クロム酸カリウム

クロム酸カリウムとは

クロム酸カリウムの基本情報

図1. クロム酸カリウムの基本情報

クロム酸カリウム (Potassium chromate) とは、化学式 K2CrO4で表される無機化合物です。

代表的な六価クロムの一種に分類されます。CAS登録番号は、7789-00-6です。分子量194.158、融点975℃、沸点1,000℃であり、常温では黄色の斜方系結晶または固体です。

水に溶ける (水への溶解度629g/L,20℃) 一方、エタノールには溶けにくい性質があります。密度は2.732g/cm3です。酸化剤であると同時に強い腐食性を示します。六価クロムであることから人体への毒性も高い物質です。取り込まれると肺がんや副鼻腔がんを発症するリスクがあります。これらの特徴から、毒物及び劇物取締法において、劇物であると指定されています。

クロム酸カリウムの使用用途

クロム酸カリウムの主な用途は、酸化剤や重金属イオンを分析するための試薬、繊維に染料を定着させるために使用する媒染剤、クロム酸塩の原料 (顔料など) です。また、なめし革の仕上げに使用され、革の耐熱性、染色性、断熱性を向上させる用途もあります。

分析試薬としての用途の例に、モール滴定法による銀イオンの検知があります。この滴定法は、クロム酸カリウムを指示薬として用い、赤色のクロム酸銀の沈殿が現れる点を終点とする分析方法です。

クロム酸カリウムの性質

1. クロム酸カリウムの合成方法

クロム酸カリウムの合成

図2. クロム酸カリウムの合成

クロム酸カリウムは、工業的には二クロム酸カリウムと炭酸カリウムから合成されます。二クロム酸カリウムの熱水溶液に炭酸カリウムをわずかに塩基性になるまで加え、濃縮放冷します。この工程によって、クロム酸カリウムを黄色の結晶として得ることが可能です。

尚、別の合成方法としては、水酸化カリウム三酸化クロムとを反応させる方法があります。

2. クロム酸カリウムの化学的性質

クロム酸カリウムの化学的性質

図3. クロム酸カリウムの化学的性質

クロム酸カリウムの固体は硫酸カリウムと類似の結晶構造であり、四面体型のクロム酸イオンが含まれ斜方晶系に属します。尚、格子定数はa = 5.92Å、b = 10.39Å、c = 7.68Åです。

熱を加えると赤色に変色する物質です。クロム酸カリウムの水溶液は、クロム酸イオンの加水分解によって弱塩基性を呈します。また、水溶液を酸性にすると二クロム酸イオンを生じて黄色からオレンジ色に変化することが知られています。

分析化学では、沈殿試薬として用いられる物質です。例えば、銀イオンと反応した場合は赤褐色のクロム酸銀を沈殿し、バリウムイオンと反応した場合には黄色のクロム酸バリウムを沈殿します。

3. クロム酸カリウムの法規制情報

クロム酸カリウムは、有害な六価クロムの一種であることから、各種法令によって厳しく規制されています。毒物及び劇物取締法によるところでは、劇物の指定を受ける物質です。

労働安全衛生法では「クロム酸およびその塩」として、第2類特定化学物質に指定されています。化学物質排出把握管理促進法では、第1種指定化学物質、特定第1種指定化学物質に分類されている物質です。

水質汚染した場合には環境に深刻な影響を与えるため、水質汚濁防止法での排出基準は2mg/L以下です。廃棄する際は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の特別管理産業廃棄物処理基準に従う必要があります。

クロム酸カリウムの種類

クロム酸カリウムは、主に研究開発用試薬として市場に流通しています。人体にも環境にも有害な物質であり、各種法令による規制を受けていることから、注意して取り扱うことが必要な物質です。

製品には、25g , 100g , 500g , 1kgなどの容量の種類がある他、2%水溶液などの製品もあります。通常、プラスチックボトルなど、実験室で取り扱いやすい包装で提供されます。常温での輸送・保管が可能な試薬です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7789-00-6.html

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