クロム酸ナトリウム

クロム酸ナトリウムとは

クロム酸ナトリウムの基本情報

図1. クロム酸ナトリウムの基本情報

クロム酸ナトリウム (Sodium chromate) とは、化学式 Na2CrO4で表される、無機化合物です。

六価クロム化合物の一種に分類されます。CAS登録番号は、7775-11-3です。分子量161.97、密度 2.7g/cm3、融点792℃であり、常温では黄色の結晶性固体若しくは結晶性粉末です。

結晶構造は斜方晶系結晶構造ですが、413℃以上では六方晶系になります。水に溶けやすく、エタノールにはほとんど溶けません。水への溶解度は0.53g/mL (20℃) です。強力な酸化作用があります。

他の六価クロム化合物と同様に発がん性を持ち、人体に対して有害です。毒物及び劇物取締法では劇物に指定されており、労働安全衛生法では、第2類特定化学物質に「クロム酸およびその塩」として指定されています。

クロム酸ナトリウムの使用用途

クロム酸ナトリウムの用途には、 塗料やインク、染色補助剤や顔料の製造、石油産業における防腐剤、木材防腐剤などがあります。鉄の防食剤にも用いられることがあり、軟鋼、ステンレス、カーボン、テフロン、ニトリルゴムとの耐蝕性に優れた物質です。医学分野では赤血球量の測定に使用されることもあります。

合成的観点の用途の一つは、各種クロム化合物の原料です。工業製品として利用される重クロム酸ナトリウム、重クロム酸カリウム、無水クロム酸、酸化クロム、塩基性硫酸クロムはクロム酸ナトリウムを経由して合成されます。また、強力な酸化力を持つことから、合成経路において酸化剤として使用されることもある物質です。

クロム酸ナトリウムの性質

1. クロム酸ナトリウムの合成方法

クロム酸ナトリウムの合成方法

図2. クロム酸ナトリウムの合成方法

クロム酸ナトリウムは、二クロム酸カリウムと水酸化ナトリウムの反応によって合成されます。その他には、酸化クロム (III)炭酸ナトリウムの混合物を酸素の存在下で加熱する方法でも合成することが可能です。

2. クロム酸ナトリウムの化学的性質

クロム酸ナトリウムの化学的性質

図3. クロム酸ナトリウムの化学的性質

クロム酸ナトリウムは吸湿性の固体であり、四、六、十水和物を形成します。通常市販されている水和物は、四水和物であることが多いです。

水溶液は弱塩基性を呈します。これは、クロム酸イオンの加水分解によるものです。また、水溶液を酸性にすると二クロム酸イオンを生じて黄色からオレンジ色に変化することが知られています。この二クロム酸イオンを生じた水溶液を硫酸を用いて更に酸性にすると、三酸化クロム (酸化クロム (IV) ) が生じます。これは、三酸化クロムの工業的製法の一つです。

不燃性で、それ自身は燃えないとされます。しかし、加熱により分解して、腐食性又は毒性の蒸気を発生する恐れがある物質です。

3. クロム酸ナトリウムの法規制情報

クロム酸ナトリウムは、有害な六価クロムの一種であることから、各種法令によって厳しく規制されています。毒物及び劇物取締法によるところでは、劇物の指定を受ける物質です。

労働安全衛生法では「クロム酸およびその塩」として、第2類特定化学物質に指定されており、労働基準法では、疾病化学物質に指定されています。化学物質排出把握管理促進法では、特定第1種指定化学物質に分類されている物質です。

クロム酸ナトリウムの種類

クロム酸ナトリウムは、主に研究開発用試薬として市場に流通しています。人体にも環境にも有害な物質であり、各種法令による規制を受けていることから、注意して取り扱うことが必要な物質です。クロム酸ナトリウムとしてそのまま販売される場合の他、四水和物として提供される場合があります。

製品には、5g , 25g , 100g , 500gなどの容量の種類があります。通常、プラスチックボトルなど、実験室で取り扱いやすい包装で提供されます。常温での輸送・保管が可能な試薬です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7775-11-3.html

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