ギ酸エチル

ギ酸エチルとは

ギ酸エチルの構造式

図1. ギ酸エチルの構造式

ギ酸エチルとは、カボン酸エステルに分類される有機化合物です。

天然物としてはパイナップルやラズベリーなどの果物、キャベツや酢、バター、ブランデーなどに含まれており、甘い果実臭を有しています。

化学式はC3H6O2で分子量は74.08の無色の液体です。沸点は54.3℃、引火点は-20℃です。消防法では第四類第一石油類に分類されており、空気と混合することで、爆発性の気体を生じさせます。エタノール一酸化炭素を、強塩基の存在する中で反応させることにより合成されます。

ギ酸エチルの使用用途

ギ酸エチルは、パイナップルなどの果実系香料やウィスキー、ラム酒、ブランデーなどの洋酒のフレーバーとして、様々な用途で用いられています。純粋なギ酸エチルのみを高濃度で嗅うぐ、スーッとする接着剤や除光液のような匂いに感じます。

しかし、低濃度になると、フルーツをカットした時に最初に感じる新鮮なフルーツに特有の甘い匂いに変わります。同じ成分でも濃度の高い低いによって香りの印象が変わることはよくあることです。

特殊な例として、宇宙船の船外での活動中に宇宙服にギ酸エチルが付着すると言われています。宇宙服に付着するギ酸エチルは、地球上での使用や製造にはほとんど関わりのない微量な量であり、宇宙空間での有機物の生成や宇宙船の燃料の燃焼などから発生する可能性があります。このような珍しい現象から、ギ酸エチルを含む宇宙空間の香りを再現した香水や、宇宙空間での活動をテーマにした商品が開発されています。

また、二次電池の非電解質溶媒として用いられる事例も存在します。ギ酸エチルが (メタ) アクリル基とを同時に有する化合物と混合された非電解質溶媒として使用されると、高温での保管時、電池の厚さ増を大きく減少させることができます。他の電解液添加剤と混合する場合であっても、その効果の相殺または低下が発生しないことが確認されており、蟻酸エチルはギ酸メチルとともに新たな高機能二次電池の電解質溶媒として注目されています。

ギ酸エチルの性質

1. 溶解性

ギ酸エチルは水に少し溶けます。エステル結合には極性があり、水分子と同様に分極している部分 (カルボキシル基) を持ちます。そのため、水分子との間に水素結合が形成されることで、水に少し溶けることができます。油となじみやすいエチル基を含むため、エタノール及びアセトンに極めて溶けやすい性質を持ちます。

2. 沸点が低い

ギ酸エチルの構造式

図2. ギ酸の水素結合

一般に、物質の沸点は分子量が大きいほど高くなります。これは、分子量が大きいほど分子間に働く分子間力が大きくなるからです。大きな分子間力を振り切って気化させるには大きなエネルギーを与える必要があります。

しかし、ギ酸がメタノールやエタノールとエステルを作った場合、分子量が増えているのにもかかわらず、ギ酸よりも沸点が高くなりがます。これは、ギ酸は互いに水素結合で結びつくのに対してギ酸エチル同士では水素結合を作らないためです。以下にギ酸とそのエステルの沸点を示します。

名称 化学式 分子量 沸点
ギ酸 HCOOH 46 101℃
ギ酸メチル HCOOCH3 60 32℃
ギ酸エチル HCOOC2H5 74 54℃

 

3. 特有の芳香がある

ギ酸エチルには特有の芳香があり、新鮮なフルーツに特有の甘い匂い香りがします。理由はギ酸エチルが天然に存在する果物に含まれているためで、例えばラズベリーやパイナップルなどの果物に含まれています。

ギ酸エチルのその他情報

1. ギ酸エチルの製造方法

ギ酸エチルの製造

図3. ギ酸エチルの製造

ギ酸とエタノールを混合し、触媒を加えるとエステル化によってギ酸エチルが生成します。触媒としては濃硫酸などの強酸が用いられます。この反応では硫酸からのH+が触媒として働くと同時に、生成する水が濃硫酸と水和して反応系から排除されるので、下の図の平衡がより右に移動します。

2.ギ酸エチルの安全性情報

ギ酸エチルの液体や蒸気には引火性があります。また、目や呼吸器に刺激を与える恐れがあります。消防法で「 第4類引火性液体」に、労働安全衛生法で「危険物・引火性の物」にそれぞれ指定されており、取り扱いには注意が必要です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/109-94-4.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です