ギ酸メチル

ギ酸メチルとは

ギ酸メチルの基本情報

図1. ギ酸メチルの基本情報

ギ酸メチル (英: Methyl formate) とは、分子式 C2H4O2で表されるカルボン酸エステルに分類される有機化合物の一種です。

存在する最低分子量のカルボン酸エステルとして知られています。別名には、メタン酸メチル、メチルメタノアートなどの名称があります。CAS登録番号は、107-31-3です。

分子量は60.05、融点は-100℃、沸点は32.5℃であり、常温では揮発性の無色透明の液体です。エーテル様の甘い臭いを有しています。密度は、0.974g/mLです。ベンゼン、アセトン、エーテル等の有機溶剤とは自由に混合し、また水にも常温で約20%~30%溶解します。

ギ酸メチルの使用用途

ギ酸メチルの使用用途は、基礎化学品の合成原料、香料及び溶剤、鋳型及び中子製造時の硬化剤、発泡剤及びスプレー剤、一酸化炭素発生源などが挙げられます。

基礎化学品の合成原料としては、ギ酸、ホルムアミド、酢酸、DMF (N, N’-ジメチルホルムアミド) などの工業的合成に用いられている物質です。その高い蒸気圧を利用して、速乾剤として用いられる用途もあります。

歴史的には、分解反応を利用し、冷却材としても用いられてきた経緯があります。より安全な冷却材が開発されるまで、ギ酸メチルは、二酸化硫黄に代わって冷蔵庫用の冷却に使われていました。

更に、二次電池の非電解質溶媒として用いる用途も存在しています。ギ酸メチルを (メタ) アクリル基を持つ化合物と混合した非電解質溶媒として使用すると、高温での保管時における電池の厚さの増加を大きく抑制させることができます。

また、他の電解液添加剤と混合する場合であっても、その効果の相殺または低下が発生しないことが確認されており、ギ酸メチルは、蟻酸エチルとともに、新たな高機能二次電池の電解質溶媒として注目されている物質です。

ギ酸メチルの性質

1. ギ酸メチルの合成

ギ酸メチルの合成

 図2. ギ酸メチルの合成

ギ酸メチルの実験室的製法は、メタノールとギ酸の縮合反応です。工場など、大スケール合成では、強塩基の存在下でメタノールと一酸化炭素を反応させて合成されています。

2. ギ酸メチルの化学的性質

ギ酸メチルは、蒸気圧が高く (64kPa (20℃)) 、揮発しやすい物質です。また、引火点が-19℃と、引火しやすい特徴があります。

通常の取り扱い温度、圧力のもとでは安定ですが、強酸化剤とは反応し、火災や爆発の危険性をもたらす恐れがあります。保管に際しては、高温及び強酸化剤との混触を避けることが必要です。

3. ギ酸メチルの化学反応

ギ酸メチルの化学反応

図3. ギ酸メチルの化学反応

ギ酸メチルとアンモニアの化学反応により、ホルムアミドが合成できることが知られています。また、ギ酸メチルとジメチルアミンの化学反応では、DMF (N, N’-ジメチルホルムアミド) が生成します。

ギ酸メチルの種類

ギ酸メチルは、主に研究開発用試薬製品及び工業用化成品として販売されています。

研究開発用試薬製品には、100mL、500g、500mL、2Lなどの容量の種類があります。通常、常温で取り扱うことのできる試薬です。

工業用化成品は、ドラム缶やペール缶など工場で使用しやすい大型の荷姿で提供され、鋳物硬化剤やCO源などの用途で使用されています。

ギ酸メチルのその他情報

ギ酸メチルの有害性と法規制情報

ギ酸メチルは、前述の通り引火性が高い物質です。また、 ヒトに対しては、軽度の皮膚刺激・強い眼刺激・中枢神経の障害・視覚器の障害のおそれ・呼吸器への刺激のおそれなどの有害性が指摘されています。

これらの理由により、ギ酸メチルは、法律で取り扱いが規制されている物質です。消防法では、「第4類引火性液体、第一石油類非水溶性液体」に指定され、労働安全衛生法では「名称等を通知すべき有害物」に指定されています。取り扱いの際はこれらの法令を遵守して正しく使用することが必要です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0703.html

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