キニーネとは
キニーネ(化学式C20H24N2O2) とは、ペルー原産のシンコナという木の樹皮に含まれるアルカロイドです。
アルカロイドとは、窒素を含んだ塩基性を示す天然由来の植物成分の総称です。キニーネはキニジンの立体異性体であり、別名キニンとも呼ばれます。
抗マラリア薬として知られるアルカロイドの1種であり、1600年代から使用されています。そのほか、フィラリア症やBabesiosis (バベシア症) の治療に有効です。また、昔から熱帯地域での飲料水の消毒や、飲料水中のアオミドロの除去にも使用されています。
キニーネは苦味を持ち、紫外線によって蛍光を発するのが特徴です。光に反応しやすいため、暗室保管する必要があります。抽出した化合物は、室温では白色の結晶性粉末として存在します。
キニーネの使用用途
キニーネは、主に抗マラリア薬として使用されます。マラリアとは、マラリア原虫と呼ばれるプラスモジウム属の寄生虫によって引き起こされる感染症であり、蚊を介して人に感染します。
キニーネは、このマラリア原虫に対し有毒であり、マラリア原虫が赤血球を溶解させる機能を防止し、症状を緩和する効果があります。また、フィラリア症やBabesiosis (バベシア症) の治療にも使用されます。その他、解熱および鎮痛作用、筋肉膜に直接作用する効果も備え、一般的な風邪の薬、夜行性脚のけいれんおよび筋緊張性の前天性障害の治療薬や、など医薬品分野で使用されることも多いです。
熱帯地域での飲料水の消毒や、アオミドロの除去も使用用途の1つとして挙げられます。また、キニーネは非常に苦味が強いことから、苦味付けや香料剤として使用されており、例えば海外においてはトニックウォーターの製造にも使われています。飲料水へのキニーネの添加には、食味のほかにも微生物の成長を防止する効果もあります。
キニーネの性質
キニーネは、カンザシノキ科の植物であるキナノキの樹皮から抽出されるアルカロイドです。分子式C20H24N2O2、分子量が324.43g/molで表される化合物で、塩基性環状分子であるキノリンの1種です。
キニーネの構造は、生理活性と密接に関連しており、マラリア原虫に対する抗生物質効果を持つことが報告されています。キニーネの構造を元に、後年クロロキンやメフロキンなどの人工的な抗マラリア薬が開発されました。
キニーネをはじめとするシナアルカロイドは、有機合成における立体選択的な反応の触媒として用いることが可能です。また、キニーネは一定の蛍光波長と高い蛍光量子収率を持つため、光化学における蛍光標準物質としても使用されます。
その吸収波長ピークは350nm付近で、蛍光波長ピークは460nm付近です。このときの蛍光は明るい青色を示します。蛍光量子収率は酸性溶液中で高く、0.1M硫酸溶液中でφ=0.58という高い蛍光性を示します。
キニーネのその他情報
キニーネの製造方法
キニーネは、天然物であるキナノキの樹皮から抽出されます。化学合成によるキニーネの製造については、これまでいくつかの報告がありますが、いずれも工程が複雑で天然資源からの単離に経済的な面で劣っています。
また、マラリア治療薬としては、より安全域が高く大量生産が可能な化学合成医薬品 (クロロキン、メフロキン、ハロキンなど) が開発されたため、キニーネを化学合成するメリットは失われています。
植物からの抽出方法は、以下のとおりです。
- キナノキ属の樹木から樹皮を採取する。
- 樹皮を乾燥させ、砕いて細かくする。
- 樹皮を水やアルコールに浸し、キニーネを抽出する。
- 抽出液を濾過し、濃縮する。
- 濃縮した液体をクロマトグラフィーにかけて、キニーネを純化する。