アセトフェノン

アセトフェノンとは

アセトフェノンの構造

図1. アセトフェノンの構造

アセトフェノンとは、別名メチルフェニルケトンと呼ばれ、オレンジの花のような独特の芳香を有します。常温で無色の液体であり、天然物としては、ラブダナム油やウミダヌキ香、イチゴ、日本茶花中に存在します。本化合物は、香料、溶剤、有機合成の材料などの用途で幅広く用いられています。

アセトフェノンの使用用途

1. 独特の芳香と香料としての利用

アセトフェノンは、その独特の芳香を活かして、着香料や香料の合成原料として広く用いられています。その使用例としては、ナッツ,飲料,アイスクリーム,キャンディーなどの多くの食品やタバコなどが挙げられます。

2. ケト基の反応性の高さと工業製品、医薬品としての利用

アセトフェノンはカルボニル基を有するという構造上の特徴から工業製品、医薬品の有機合成における有用な基質となります。工業用製品の用途としては、機能性樹脂や、今でも根強い需要のある写真のフィルムなどの光重合開始剤の原料、さらには、沸点が高いことや安定性に優れているという特性を活かした各種溶剤としても使われています。なお、アセトフェノンの溶剤としての使用は、エタノールやケトン、エステルなどと混合されて使われることが多いです。

アセトフェノンの物理化学的諸性質

1. 名称
和名:アセトフェノン
英名:acetophenone
IUPAC名:1-phenylethan-1-one

2. 分子式
C8H8O

3. 分子量
120.15

4. 融点
19.65℃

5. 溶媒溶解性
水に不溶。エタノールクロロホルムに可溶。

アセトフェノンのその他情報

1. カルコンの合成基質としての利用とグリーンケミストリーとの関係

カルコンの合成

図2. カルコンの合成

本化合物は、C-C結合を伸ばして新しい結合を作る反応として有名なアルドール反応の良い基質となります。この特徴から、多くの医薬品中間体として幅広く用いられています。そのような反応の一例として、塩基性触媒存在下でのベンズアルデヒドとアセトフェノンのアルドール縮合によるカルコンの合成があげられます。本反応は、アトムエコノミーが高く、環境への負荷が少ない反応であり、言い換えると『目的生成物を得るためにゴミが出ない反応』と表現する事ができます。そのため、本化合物はグリーンケミストリーという観点から非常に優れた原料であるといえます。

2. アセトフェノンの合成

ベンゼン塩化アセチルとのフリーデル‐クラフツ反応により合成します。

3. アセトフェノンの毒性

飲み込むと有害であり、軽度の皮膚刺激性や強い眼刺激性を有します。また、本化合物は可燃性液体でもあります。このような理由から、消防法上では第4類第3石油類の非水溶性に、労働安全衛生法では有害物表示対象物に指定されています。

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