アセチルアセトン

アセチルアセトンとは

アセチルアセトンの構造

アセチルアセトン (Acetylacetone) とは、示性式CH3COCH2COCH3で表される有機化合物です。

IUPAC命名法では2,4-ペンタンジオン (Pentane-2,4-dione) と表記されます。1,3-ジケトンの一種であり、常温では無色もしくはうすい黄色の液体です。

果物が腐った時に発するケトンのような匂いを発し、水に溶解します (溶解度16 g/100 mL) 。また、エタノール及びジエチルエーテルなど、様々な溶剤にも溶けやすい性質を持ちます。CAS 登録番号は123-54-6です。

尚、安全衛生法では「名称等を表示すべき危険有害物」に、消防法では第4類 第2石油類 非水溶性液体に、それぞれ指定されています。

アセチルアセトンの使用用途

アセチルアセトンは、金属イオンの抽出剤として使用することが可能です。理由として、アセチルアセトンの共役塩基アセチルアセトナート (略号 acac) は、2つの酸素原子を介して二座配位子として多くの遷移金属イオンと六員環結合を形成することが挙げられます。

また、アセチルアセトンの金属錯体には、広範囲にわたる使用用途があります。具体的には、触媒や反応試薬の前駆体、NMRシフト試薬、有機合成における遷移金属触媒や、工業的なヒドロホルミル化触媒の前駆体などです。

その他にも、アセチルアセトンは、ガソリンや潤滑油の添加剤としても知られています。近年では、色素増感型太陽電池の開発において、ベースとなる酸化チタン (Ⅳ) にアセチルアセトンを添加すると性能が向上するとの報告があります。

アセチルアセトンの原理

アセチルアセトンの原理を性質や合成方法、化学反応の観点から解説します。

1. アセチルアセトンの性質

アセチルアセトンのケト-エノール平衡

アセチルアセトンは、示性式CH3COCH2COCH3で表されます。分子量100.12、融点-23℃、沸点約141℃、引火点39℃の有機化合物です。常温では密度0.98g/mLの無色透明の液体であり、水への溶解度は16g/100mLです。

1,3ジケトンであるため、ケト-エノール平衡状態を取ります。更に、エノール体はC2v対称分子として存在していて、エノールの水素原子はちょうど2つの酸素の中間に位置して安定化を受けています。このことは、マイクロ波分光法などにより証明されました。

2. アセチルアセトンの合成方法

アセチルアセトンは、工業的には、酢酸イソプロペニルの熱転位によって製造されています。

実験室的合成法としては、

などの合成方法が挙げられます。

3. アセチルアセトンの化学反応

アセチルアセトンの反応の例

共役塩基と金属錯体の形成
アセチルアセトンは、共役塩基アセチルアセトナート (acac) として、種々の金属錯体を形成します。代表的なものは、以下の通りです。

  • Mn(acac)3
  • VO(acac)2
  • Cu(acac)2
  • Fe(acac)3
  • Co(acac)3

例えば、Mn(acac)3フェノール類の酸化的カップリング反応などに用いられる1電子酸化剤です。

イミン・ヘテロ環式化合物の合成
アセチルアセトンはカルボニル基でアミンと反応して縮合します。生成物は、モノ−あるいはジケトイミンです。また、ピラゾール (ヒドラジンと反応) やピリミジン (尿素と反応) など、ヘテロ環式化合物の合成反応に用いられます。

酵素的分解反応
酵素アセチルアセトンジオキシゲナーゼによって、アセチルアセトンの炭素-炭素結合が切断されることが知られています。この反応の生成物は、酢酸と2-オキソプロパナールです。

アセチルアセトンの種類

アセチルアセトンは、実験室用化学試薬として市販されています。容量には、25mL、100mL、500mLなどがあります。常温試薬ですが、暗所保存が原則です。

また、アセチルアセトンの各種金属錯体 (Al, Cr, Co, VO, Cu, Fe, Ni, Zn, Zr, Sn, Ti, Inなど) は、実験室用の試薬スケールから、工業用の5kg、10kgスケールまで様々な製品が販売されています。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/123-54-6.html

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