フッ化水素

フッ化水素とは

フッ化水素とは、特有の刺激臭のある無色の発煙性液体です。

フッ素原子と水素原子が約92pmの距離で結合した直線分子です。水素結合により、分子間に強い相互作用を持っています。フッ素の電気陰性度が大きいので、フッ化水素同士で二量体かそれ以上の多量体を形成しています。

無機化合物で、化学式はHF、分子量は20.01、CAS登録番号は7664-39-3です。フッ化水素の水溶液はフッ化水素酸  (英: Hydrofluoric acid) やフッ酸と称されます。

フッ化水素の性質

1. 物理的特性

フッ化水素は、融点が-84℃、沸点が20℃、密度が0.92です。分子間で水素結合を有するため、沸点が他のハロゲン化水素に比べて異常に高いことが特徴的です。水やエタノールにはよく溶け、ベンゼントルエン等の有機溶媒にも溶けます。

2. その他の特徴

液体フッ化水素は、様々な物質に対して溶解能の大きいプロトン性極性溶媒です。水などと同じく自己解離が存在しますが、陰性度が大きいフッ化物イオンは別のフッ化水素分子と結合して溶媒和します。フッ化水素の水溶液であるフッ化水素酸は、腐食性があるなど毒性が極めて強く、取り扱いには注意が必要です。

フッ化水素の使用用途

1. 半導体関連

純度99.999%以上の5Nクラスのフッ化水素は、液晶パネルなどの集積度が比較的低い製品に利用されています。不純物量が歩留まりに影響する最先端の半導体プロセスでは、超高純度のものが求められ、エッチング工程など向けに12Nの超高純度品が生産されています。フッ化水素は、モバイル機器用ディスプレイパネルに使われるフッ化ポリイミドの原料でもあり、ハイテク産業を支える重要な物質の一つです。

2. フッ素化合物原料

フッ化水素は、フレオン(冷媒)や有機フルオロカーボン、フッ素樹脂、フッ化水素酸の二次製品 (フッ化カリウムフッ化マグネシウム) などのフッ素化合物の製造に広く用いられています。

3. その他

フッ化水素は他にも、ガラスの目盛付けや模様付け、つや消し、金属表面のフッ化処理、アルキル化パラフィン製造の有機合成触媒などに使われています。また、メッキ (亜鉛メッキの際の酸洗い) や分析試薬としての用途など、フッ化水素は広く用いられています。 

フッ化水素のその他情報

1. フッ化水素の製法

フッ化水素は、蛍石 (フッ化カルシウムが主成分の鉱石) に濃硫酸を添加して加熱することで製造できます。水に対してフッ素を加えると、激しく反応してフッ化水素と酸素が生成します。フッ化水素カリウムを加熱することによっても、フッ化水素を得られます。

2. フッ化水素とガラス

フッ化水素のフッ化物イオンは、ケイ素原子との強い結合形成と、ケイ酸骨格へのプロトン化の相互作用により、ガラス中のケイ酸と反応してヘキサフルオロケイ酸を生じ、これらを腐食させます。気体のフッ化水素は、ケイ酸と反応して四フッ化ケイ素を生じます。フッ化水素の容器には、ガラスの代わりにポリエチレンやテフロンのボトルが使用されます。

3. 法規情報

フッ化水素は、毒物及び劇物取締法で医薬用外毒物に、労働安全衛生法で第2類特定化学物質に指定されており、取り扱いには厳重に注意が必要です。ウラン濃縮やサリンなど毒ガスの製造にも使用可能なため、輸出が統制される品目であり、日本では外国為替及び外国貿易法によって経済産業大臣の許可なく輸出することが禁止されています。

4. 取扱いおよび保管上の注意

取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 保管容器は、換気の良い場所で保管する。
  • ガラスや無機物を侵すため、接触を避ける。
  • 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
  • 使用時は保護手袋、保護衣、保護眼鏡、保護面を着用する。
  • 皮膚に付着した場合は、直ちに流水またはシャワーで洗い流す。
  • 眼に入った場合は、直ちに水で数分間注意深く洗う。
  • 身体への付着、曝露があった場合には、直ちに医師に連絡する。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0063.html

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