フェノールフタレインとは
図1. フェノールフタレインの基本情報
フェノールフタレイン (Phenolphthalein) とは、有機化合物の一種で、化学式C20H14O4で表される物質です。
2つのフェノール骨格と無水フタル酸由来の構造を有し、フタレイン染料の1種に分類されます。pHによって溶液の色が変化することから、分析化学において 酸塩基指示薬に用いられる物質です。
PP、HInもしくはphph などの略称が用いられることがあります。CAS番号は77-09-8 です。分子量は318.32、融点は258〜263°Cであり、常温では白色または淡黄色の固体です。水には溶けません。
その他の溶媒に対しては、エタノールにはやや溶けやすい性質ですが、ジエチルエーテルには溶けにくく、ベンゼンには不溶、DMSOにわずかに溶けるとされています。密度は1.277g cm−3です。
フェノールフタレインの使用用途
フェノールフタレインの代表的な使用用途は、分析化学における酸塩基指示薬です。フェノールフタレインをエタノール、もしくはエタノールと水の混合溶媒に溶解したフェノールフタレイン溶液が用いられ、塩基性を検出すると赤紫色に呈色します。
酸塩基指示薬としての性質を応用した利用例の一つが、コンクリートの検査です。コンクリートが劣化すると炭酸塩が生成してpHが低下します。そのため、フェノールフタレインを用いると、新しいコンクリートのみが呈色し、古いコンクリートは呈色しないという原理により、コンクリートの劣化を調べることができます。
その他の用途には、血液の検出 (カスル・マイヤー試験) 、カドミウムや金の検出、つや消しのインクや、おもちゃの人形の染髪などがあります。かつては下剤としても使用されましたが、齧歯類における実験の結果発がん性が疑われたため、現在では臨床利用はされていません。
フェノールフタレインの特徴
図2. フェノールフタレインの合成
フェノールフタレインは、無水フタル酸とフェノールを酸性条件で加熱混合することにより、無水フタル酸1分子に対して フェノールが2分子縮合して合成されます。光による変質の恐れがあるのが特徴です。
そのため、高温と直射日光を避けた保管が必要となります。また、強酸化剤との混触は危険であり、分解生成物として一酸化炭素 (CO) や二酸化炭素 (CO2) が挙げられます。
フェノールフタレインの種類
フェノールフタレインは主に、試験研究用試薬・指示薬として、試薬メーカーから販売されています。純物質としての販売のほか、中和滴定用指示薬としてそのまま使用できる1.0w/v%エタノール溶液製品があります。
純物質製品の容量の種類は、25g , 100g , 500gなどです。室温保管可能な試薬製品として取り扱われます。1.0w/v%エタノール溶液製品は、100mL , 500mLなどの容量で提供されています。室温保管可能な試薬です。
光による変質を防ぐため、包装に褐色ガラス瓶が用いられる場合があります。
フェノールフタレインのその他情報
1. 分析化学におけるフェノールフタレイン
図3. pHの変化とフェノールフタレインの構造
フェノールフタレイン溶液は、pHによって色が変化することが特徴です。変色が明瞭で、共存物質の影響を受けにくいため酸塩基指示薬として広く用いられています。
pH8.3未満 の酸性側で無色、pH8.3〜13.4 の塩基性側でピンクから赤紫色を示し、pH 13.4よりも更に塩基性の条件では再び無色となります。これは塩基性条件において、フェノール部位が脱プロトン化を受けて分子構造が変化することによるものです。
2. フェノールフタレインの法規制情報
フェノールフタレインは、発がんのおそれ、遺伝性疾患のおそれなど、人体への有害性が指摘されています。そのため、令和6年より労働安全衛生法にて「名称等を表示すべき危険物及び有害物」「名称等を通知すべき危険物及び有害物」に指定されることが決まっています。
化学物質排出把握管理促進法では、令和5年3月31日までは「第2種指定化学物質」ですが、令和5年4月以降は非該当物質となることが決まっている物質です。
参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/cas-77-09-8.html