トリニトロトルエン

トリニトロトルエンとは

トリニトロトルエンは、トルエンに3つのニトロ基が結合した有機化合物で、化学式はC6H2(NO2)3CH3で表され、TNTと略されることがあります。

6つの異性体がありますが、基本的に2,4,6-トリニトロトルエンのことを指します。トルエンを濃硝酸と濃硫酸でニトロ化することにより製造されます。

TNTは熱や摩擦によって爆発する性質を持つことから、第一次世界大戦中に広く使用されていました。その後も、軍事や民間で広く使用されています。

トリニトロトルエンの使用用途

トリニトロトルエンは、主に爆薬・火薬として利用されます。兵器としてだけではなく、硝酸アンモニウムと混ぜて、工業爆薬としても使われる場合があります。

爆薬・火薬として広く使用していることから、核爆弾の威力を表す単位は「TNT総量」です。その他、花火や信号弾、ロケットの推進薬などにも利用されています。

トリニトロトルエンの性質

トリニトロトルエンは、分子量227.13、CAS登録番号 118-96-7で表わされます。

1. 物理的性質

無色〜黄色で、無臭の個体 (20℃、1気圧) で、可燃性で爆発性の高い有機化合物です。消防法では「第5類自己反応性物質」に指定されています。

融点80.1℃、沸点、初留点及び沸騰範囲240℃ (爆発) 、分解温度240℃ (爆発) です。また、pH5.8 (20℃、127 mg/L) 、密度及び/又は相対密1.65g/cm3、蒸気圧は 8.02E-006 mmHg  (25℃) です。

2. 化学的性質

水への溶解度は115 mg/L (23℃)で、ベンゼン、ピリジンに極めてよく溶解し、エーテルに可溶、エタノールにわずかに溶解します。衝撃、摩擦、振動を加えると爆発的に分解する危険性があり、加熱すると有害なフューム (化学反応、燃焼、蒸留などで発生する蒸気の凝縮によって生成する微粒子) が発生します。

加熱、摩擦、振動させないように、取り扱う際は注意が必要です。また、ニトロ基を持つことから、強い酸化剤としての性質を持ちます。

トリニトロトルエンのその他情報

1. トリニトロトルエンの安全性

トリニトロトルエンは大量爆発危険性のある爆破発物です。急速に加熱する、または強い衝撃を加えると、火災および爆発の危険性があります。大火災の場合は、消火せず避難が必要です。

飲み込むと人体に有害で、皮膚刺激性があり、アレルギー性皮膚炎を起こす恐れがあります。また、強い眼刺激性、呼吸器系への刺激の恐れ、発がんの恐れ、血液系の障害の危険性があります。

長期、又は反復ばく露による眼、神経系、心血管系、血液系、造血器系、肝臓への障害が生じる恐れがあります。また、水生生物に非常に強い毒性があり、長期継続的影響によっても非常に強い毒性を持ちます。

2. トリニトロトルエンの取扱方法

適切な保護手袋、保護衣、保護眼鏡、保護面を着用し、状況に応じた適切な呼吸用保護具を着用し作業を行います。洩物処理時は、自給式空気呼吸器付化学防護服を使用することが推奨されています。

屋外、または換気の良い場所で使用します。容器は接地し、常にアースをとり、粉砕、衝撃、摩擦のような取扱いをしないよう注意が必要です。また、粉じん、煙、ガス、ミスト、蒸気、スプレーを吸入しないよう作業を行います。

取扱後は汚染された衣類を脱ぎ、洗濯を行い、作業場所以外に持ち出さないよう徹底します。また、よく手を洗い、身体に付着しないようにします。

3. トリニトロトルエンの保管方法

換気の良い場所で、容器は密閉し、施錠して保管します。また、国又は都道府県の規則に従って保管しなければなりません。

乾燥が危険有害性を増加させる場合は、適切な物質で湿らせて保管します。容器は接地し、アースをとります。

消防法、火薬類取締法、国連危険物輸送勧告で規定された容器を使用し、保管する必要があります。

4. トリニトロトルエンの歴史

トリニトロトルエンに似た性質の物質に、ピクリン酸 (トリニトロフェノール) があります。TNTが開発される以前は、ピクリン酸が主要な爆薬として使われていました。

トリニトロトルエンは金属と反応することがなく、ピクリン酸と比べてより安定していることから、ピクリン酸に代わり、主要な爆薬として使用されるようになりました。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/118-96-7.html

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