チアミンとは
チアミンとは、ビタミンB1の俗称で、複数の化学物質を指します。
代表的な物質としては、チアミン塩化物、チアミン硝化物があります。またビタミンB1の誘導体として塩酸フルスルチアミンなどが販売されています。
チアミンの使用用途
チアミンの使用用途は幅広く、主に医薬品、食品、化粧品で使用されます。
1. 医療用医薬品
医薬品の有効成分として使われるチアミンは、薬生発0530第4号令和元年5月30日一般用医薬品の区分リストの変更についてを参照すると以下の通りになります。
- チアミン塩化物塩酸塩
- チアミンジスルフィド
- チアミンジスルフィド硝化物
- チアミンジセチル硫酸エステル塩
- チアミン硝化物
- オクトチアミン
- シコチアミン
- セトチアミン塩酸塩水和物
- ビスイブチアミン
- ビスベンチアミン
- フルスルチアミン
- フルスルチアミン塩酸塩
- プロスルチアミン
- ベンフォチアミンチアミン塩化物
これらは、注射剤、カプセル剤、散剤などとして、使用されます。
塩酸フルスルチアミンはビタミンB1の誘導体で、天然のビタミンB1より体内で利用されやすい形に武田薬品で開発された薬です。他に、ジェネリック医薬品のメーカーでは、ビタミンB1の誘導体としてベンフォチアミンやチアミンジスルフィドなども利用されています。
いずれの物質もビタミンB1欠乏になりやすくなる消耗性疾患、甲状腺機能亢進症、妊産婦、授乳婦、はげしい肉体労働をする方に向けての製剤です。ウェルニッケ脳症や脚気、ビタミンB1の欠乏や代謝障害が関与すると考えられる神経痛や筋肉痛・関節痛、末梢神経炎、末梢神経麻痺、心筋代謝障害便秘などの胃腸運動機能障害などに適用されます。
2. 一般用医薬品・医薬部外品
チアミンはビタミン剤やドリンク剤として一般用医薬品にも配合されています。チアミンを主成分として一定量以上配合した医薬品は第三類医薬品の分類となります。
3. 食品
日本人の食事摂取基準 (2020年版) によると、チアミンの1日の摂取推奨量は、30歳〜49歳の 男性で 1.4mg、 女性 1.1mgとなっています。また妊娠授乳中は、1.3mgが必要だとされています。
ビタミンB1は糖質をエネルギーに変化させる際に必要になるビタミンです。炭水化物や砂糖、アルコールの摂取が多い方、運動量が多い方ではときに足りなくなるため、栄養補助としてチアミンが食品に配合されています。
4. 化粧品
チアミンは、皮膚コンディショニング剤として美容液や化粧水、ボディクリームなどにも用いられます。化粧品分野ではチアミン塩酸塩が使われています。
チアミンの原理
チアミンは体内のエネルギー代謝にかかわる補酵素です。具体的には、糖代謝やクエン酸回路のエネルギー代謝の一部にに関与しています。
食品に含まれているチアミンは、タンパク質とともに存在しますが、料理や胃の中でタンパク質が変性すると遊離します。遊離したチアミンは、体内でチアミンピロホスファターゼによって、チアミン誘導体 (チアミン二リン酸) に変化し存在します。このチアミン誘導体には、酵素の役目を助ける補酵素の役割があります。
通常ビタミンB1が過剰摂取になる食品は存在しません。また、もし過剰摂取になったとしても、ビタミンB1は水溶性ビタミンであり、余分なものは尿中に移行し排泄されます。
チアミンのその他情報
チアミンの公定書
日本薬局方
日本薬局方は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 (通例薬機法と省略) 第41条により、医薬品の性状及び品質の適正を図るため、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見をもとに定めた医薬品の規格基準書です。このなかに収載されている医薬品は日本で繁用されている医薬品が中心となっています。されている医薬品が収載されています。
日本薬局方には、以下のチアミンの化合物及び誘導体が収載されています。
- セトチアミン塩酸塩水和物
- チアミン塩化物塩酸塩
- チアミン硝化物
- フルスルチアミン塩酸塩
食品添加物公定書
食品添加物公定書に収載されているチアミンの化合物及び誘導体は以下の物質です。
- ジベンゾイルチアミン
- ジベンゾイルチアミン塩酸塩
- チアミン塩酸塩
- チアミン硝酸塩
- チアミンセチル硫酸塩
- チアミンチオシアン酸塩
- チアミンナフタレン-1,5-ジスルホン酸塩
- チアミンラウリル硫酸塩
- ビスベンチアミン
参考文献
https://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc2_hishiryo_water_vitamin_3_250129.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/000514877.pdf