エピクロロヒドリン

エピクロロヒドリンとは

エピクロロヒドリンとは、エポキシ基と塩素基をもつ反応性の高いモノマー (単量体) です。

別名で2-クロロメチルオキシラン、1-クロロ-2,3-エポキシプロパン、γ-クロロプロピレンオキシドとも呼ばれます。エピクロロヒドリンは、腐食性があり、眼、鼻、喉を刺激します。

吸入すると、頭痛やめまいなど中枢神経障害を起こす恐れがあります。

エピクロロヒドリンの使用用途

エピクロロヒドリンは、合成原料として使われています。特に自動車やエレクトロニクスの化学工業分野で、広く使われているエポキシ樹脂の主原料としての用途が多いです。エポキシ樹脂は、塗料の分野で一般的な塗料、自動車や工業用の電着塗装、ドラムや缶の内側のコーティングなどに使用されています。

また、エレクトロニクスの分野では、プリント基盤やコイル絶縁素材に使用され、土木建築分野では、コンクリートや鉄などの防食塗装、接着剤シーリング剤にも使われています。

エポキシ樹脂以外にも、エピクロロヒドリンゴムやグリシジルメタクリレートの原料など、グリセリンなどの合成原料としても広く用いられ、酢酸セルロース、セロハン、エステルゴム用の溶剤としても使用されます。そのほか、化粧品、医薬品、界面活性剤、イオン交換樹脂の合成原料、繊維処理剤、溶剤なども用途の1つです。

エピクロロヒドリンの性質

エピクロロヒドリンは分子式C3H5ClO、分子量92.5、常温で無色のクロロホルムのような刺激臭がある液体です。比重は1.2058、融点は-26℃、沸点は116℃、引火点は31℃で引火性です。水にはわずかに溶け、アルコール、エーテル、クロロホルム、トリクロロエチレン、四塩化炭素などの有機溶媒に容易に溶けますが、炭化水素には溶解しません。

エピクロロヒドリンは酸性、塩基性物質の存在下では不安定です。エポキシ基と塩素化アルキルの2つの反応性の高い官能基を持つため、さまざまな物質と反応します。

爆発限界は3.8~21%で揮発性が高く、空気と爆発性混合ガスを作りやすい傾向があります。蒸気は空気より重く、低所に滞留しやすいため、使用時は通風、換気を良くして、必要により局所排気装置を設置する必要があります。

金属粉末、亜鉛、アルミニウム、アルコール、フェノール、アミン類 (特にアニリン) 、有機酸、水等と激しく反応して、火災や爆発を引き起こす危険があります。

エピクロロヒドリンのその他情報

エピクロロヒドリンの製造方法

エピクロロヒドリンの製造方法は、プロピレン塩素を反応させて得られるアリルクロライドを原料にして生産する方法と、プロピレンと酢酸を反応させて得られるアリルアルコールを原料に生産する方法の2種類があります。

1.  アリルクロライド法
アリルクロライドを次亜塩素酸溶液と反応させて、ジクロロプロパノールを得ます。これをアルカリと反応させて脱塩酸させることで、粗エピクロロヒドリンを作り、蒸留により不純物を取り除いて生産されます。

CH2=CHCH3 + Cl2 → CH2=CHCH2Cl + HCl (アリルクロライドの合成)
CH2=CHCH2Cl + HOCl → CH2ClCH(OH)CH2Cl 
CH2ClCH(OH)CH2Cl → CH2CHOCH2Cl + HCl

2. アリルアルコール法
アリルアルコールを塩酸水溶液中で塩素により塩素化してジクロロプロパノールを得ます。これにアルカリを加えることで脱塩酸して、粗エピクロロヒドリンを作り、蒸留により製品のエピクロロヒドリンを得ます。

2CH2=CHCH3 + 2CH3COOH + O2 →CH2=CHCH2OCOCH3 +H2O→ CH2=CHCH2OH + CH3COOH (アリルアルコールの合成)
CH2=CHCH2OH + Cl2 → CH2ClCH(OH)CH2Cl 
CH2ClCH(OH)CH2Cl → CH2CHOCH2Cl + HCl

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/106-89-8.html

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