ジエチルエーテル

ジエチルエーテルとは

ジエチルエーテルとは、酸素によって2つのエチル基が結合した化合物です。

エチルエーテルまたは単にエーテルと呼ばれることもあります。IUPAC名では、エトキシエタンとも呼ばれます。

ジエチルエーテルは、特異的な臭気を持つ揮発性の軽い液体です。空気中で徐々に酸化されて、危険な過酸化物を生成します。引火点が極めて低く、消防法にて危険物第4類に分類されているなど、取り扱いには注意が必要です。

ジエチルエーテルの使用用途

ジエチルエーテルは、分析用試薬や有機合成原料、樹脂・ゴム・油脂・香料等に用いる有機溶媒、燃料などに利用されています。ジエチルエーテルは、有機溶媒の中でも沸点が低いため、有機合成で使用する際に、反応系中から容易に除去することが可能です。

他にも医薬用として、主に吸入麻酔剤に多く用いられています。また、ジエチルエーテルは、特定の金属塩化物を塩酸溶液から抽出分離する場合にも利用されています。

ジエチルエーテルの発火点は160℃と低いです。85〜96とセタン価は高く、ディーゼルエンジンの燃焼助剤としても使用できます。

ジエチルエーテルの性質

ジエチルエーテルの融点は−116.3°C、沸点は34.6°Cです。エタノールベンゼンクロロホルムなどに極めて溶けやすく、水にもやや溶けやすいです。

大気中の酸素や直射日光でジエチルエーテルは酸化されて、爆発性のある過酸化物のジエチルエーテルペルオキシド (英: Diethyl ether peroxides) が生成します。そのため、抗酸化剤として、ジブチルヒドロキシトルエン (BHT) が微量添加されている場合があります。

なお、ジエチルエーテルは、2個のエチル基がエーテル結合で繋がった分子構造の有機化合物です。示性式はCH3CH2OCH2CH3または(CH3CH2)2Oと表されます。ジエチルエーテルの分子量は74.12、密度は0.708g/cm3です。

ジエチルエーテルのその他情報

1. ジエチルエーテルの合成法

工業的にジエチルエーテルは、エテンからエタノールを合成する際に、副生物として得られます。アルミナを触媒として、エタノールの気相脱水でもジエチルエーテルを合成できます。

また、ジエチルエーテルは、酸を触媒としてエタノールの脱水縮合によって合成可能です。まずエタノールを硫酸などの強酸に混ぜると、酸が解離しヒドロニウムイオンが生成します。ヒドロニウムイオンはエタノールの持つ酸素原子をプロトン化して、エタノール分子が正電荷を持ちます。プロトン化されていないエタノール分子の持つ酸素原子が、プロトン化したエタノール分子の持つ水分子と置換し、ジエチルエーテルが生成可能です。

ただし、可逆反応なので、ジエチルエーテルの収率を高めるために、反応系からジエチルエーテルを留出させる必要があります。それに加えて温度が高い場合には、エタノールが脱水してエチレンになるため、通常150℃以下で反応を行います。

2. ジエチルエーテルの代謝

ジエチルエーテルの代謝に、酸化還元酵素の総称であるシトクロムP450 (英: Cytochrome P450) が関わっていると考えられています。シトクロムP450によってジエチルエーテルはO-脱エチル化し、エタノールとアセトアルデヒドを生じるとされています。

3. ジエチルエーテルの危険性

エタノールの代替品として、ジエチルエーテルが飲用されたことも過去にありました。しかし、エタノールの数倍程度の経口毒性があり、ヒトにおける最小致死量は260mg/kgです。

ジエチルエーテルの引火点は−45℃であり、非常に引火しやすいです。絶縁性が高いため、静電気が発生しやすく、火花放電によって引火する危険性があります。ジエチルエーテルは発火点が低いので、炎や火花がなくても、高温の器具などにより容易に着火することに注意が必要です。

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