凍結乾燥機

凍結乾燥機とは

凍結乾燥機の構造

図1. 凍結乾燥機の構造

凍結乾燥機は凍結状態にある試料から水分を除去するための装置です。

基本的な装置構成は、以下の3つです。

  • チャンバー (乾燥庫):試料を格納し、乾燥させる
  • 冷却トラップ:コンデンサーで気化した水蒸気を再度凝結して回収する
  • 真空ポンプ:装置内を減圧する

予め凍結させた試料を庫内で減圧し、氷を昇華させることによって、水分・溶媒を除去する仕組みです。試料の構造の変化を最小限に抑えながら乾燥させることができます。

凍結乾燥機の使用用途

凍結乾燥機は、常温保存、冷蔵保存、凍結保存などにおいて試料を長期間保存する際、試料中の水分の影響により、どうしても劣化が防げない物質に対して使用されます。

凍結乾燥した試料は、密封すれば常温で長期間の保存が可能です。そのうえ、他の保存方法に比べて保存している間の装置の維持にかかるコストを抑えられます。

具体的な使用用途は下記のとおりです。

1. 食品

フリーズドライ食品と呼ばれるものは、凍結乾燥によって製造されている製品です。インスタントコーヒーや味噌汁をはじめ、最近では宇宙食や非常食もあります。メリットは、長期保存が可能であること、乾燥していて軽いため輸送に向いていること、風味が変わりにくいことなどです。

2. 医薬品

加熱せずに粉末化できるため、熱に弱いタンパク製剤、酵素製剤等の注射剤を製造するのに用いられています。また、動物の精子を凍結乾燥機で保存する研究等も行われています。

凍結乾燥機の原理

凍結乾燥機の模式図

図2. 凍結乾燥機の模式図

凍結乾燥機の工程は次のようになります。

  1. 予備凍結を行い、試料を十分に凍結させます。
  2. 凍結した試料をチャンバー (乾燥庫) の庫内に格納します。
  3. 一次凍結:真空ポンプで庫内を減圧し、真空状態にすることによって、試料から溶媒を昇華させます。棚板式では、昇華によって失われる熱エネルギーを棚板の加温によって補填し、効率的に乾燥させることが可能です。
  4. 二次凍結:棚板式では、棚温度を昇温し、溶質成分中に不凍水 (結合水) として取り込まれている水分を除去します。比較的短時間の工程です。
  5. 減圧を解除し、試料を取り出します。棚板式凍結乾燥機では、打栓シェルフ・打栓バイアルを用いることにより、減圧を解除する前にバイアルに打栓できるようになっています。

また、昇華した水蒸気は冷却トラップという装置で冷却し、再度氷として回収します。この時、乾燥室と冷却トラップの温度差が大きいほど乾燥が早く進みます。

食品の場合、溶けやすい、水や熱湯で戻しやすいというメリットがありますが、密封を解いてしまうと酸化、吸湿しやすくなり、劣化が進みやすくなります。

凍結乾燥機の種類

様々な凍結乾燥機

図3. 様々な凍結乾燥機

凍結乾燥機の形状には、大きく分けて、「マニホールド式 (多岐管式) 」と「棚板式」の2種類があります。

また、ラボスケールで使用される小型のものから、製造現場で用いられる大型のものまでサイズ展開も豊富です。乾燥能力としては、小型のものは150mL程度のものから、大型のものは100Lを超えるものまで機種によって大きく異なります。

1. マニホールド式 (多岐管式)

比較的小規模で主に基礎研究に適しており、棚板式は小規模から大規模まで対応可能です。

2. 棚板式

棚板を加温することで、温度調節が可能です。昇華に必要な熱エネルギーを試料に補填することができ、効率的に試料を乾燥させることができます。また、棚板式の製品の中には、打栓機能が備わっているものがあります。試料容器に打栓バイアルを用い、打栓シェルフを稼働させることにより、庫内の真空を維持したまま自動で打栓することが可能です。

参考文献
http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0035043
http://dx.doi.org/10.1016/j.cryobiol.2012.01.010
https://doi.org/10.14894/faruawpsj.6.3_203

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