加速度センサーとは
加速度センサーとは、加速度を測定する為のセンサーです。
加速度とは単位時間当たりの速度の増加を示しており、物理学において物体に力を及ぼすことのできるパラメーターとして加速度は重要になります。
加速度センサーは静電容量メソッド・圧電型 (ピエゾ抵抗) メソッド・熱感知メソッドに大別されます。各メソッドのセンサーには検知できる加速度に違いがあります。静電容量メソッドでは重力加速度を検知できますが、圧電型 (ピエゾ抵抗) メソッドでは重力加速度を検知することができません。
加速度センサーの使用用途
加速度センサーは単純に加速度を測定するほか、加速度を介して他のパラメーターを測定する際にも使用します。前者の利用方法としてはスマートフォンや携帯ゲーム機などに内蔵されているセンサー、車のエアバックを作動させるための衝撃検知用センサー、そのほかに地震計などのセンサーなどがあげられます。
後者の利用法としては、重力加速度を検知することができる静電容量メソッドの加速度センサーを利用した傾斜計や歩数計などがあげられます。
加速度センサーの原理
加速度センサーは静電容量メソッド・圧電型(ピエゾ抵抗)メソッド・熱感知メソッドに大別されます。各メソッドの基本的な原理は共通しており、センサーはフィックスパートとフレキシブルパートに分かれています。加速度センサーに加速度が負荷されるとフレキシブルパートが変形します。
フィックスパートとこの変形したフレキシブルパートとの差異をエレメントが検知することで、加速度を測定します。静電容量メソッドではフィックスパートとフレキシブルパートそれぞれに電極が存在します。電極をもつフィックスパートとフレキシブルパートが交互に櫛状に配列されているのがセンサーの構成です。
フィックスパートとフレキシブルパートの電極間の静電容量は加速度が負荷されることで変化するため、その変化量から加速度を求めることができます。加速度が負荷されていない状態 (重力加速度のみ負荷された状態) でも静電容量を持つため、重力加速度の測定が可能です。3軸加速度センサーによって重力加速度を検出する歩数計の例を、図1に示します。
図1. 3軸加速度センサー信号処理 (歩数計)
(a) は、センサーが直接測定するデータであり、歩数計が歩行者の適切な位置に取り付けられている場合、身体重心の加速度の時系列データを表します。このデータには、低周波 (DC) 成分として重力加速度が含まれており、ローパスフィルタを適用することで、データ (b) のように重力加速度のみが抽出されます。
同時に、データ (a) に対してバンドパスフィルタを適用することで、低周波の重力加速度成分および高周波のノイズ成分を除去したデータ (c) が取得されます。データ (b) および (c) は、それぞれ3軸 (x,y,z) の時系列データであり、歩行中 (測定中) にセンサーの向きが変われば、各軸で検出される数値も変動することになります。
ここで、各時刻において (b) と (c) のデータの内積 (すなわち3次元ベクトルの内積) をとることによって、データ (d) のような身体重心加速度の重力方向成分 (1軸) の時系列データを得ることが可能です。
このようにして、センサーの向きによらず、重力加速度に対して正射影した、つまりベクトル量をスカラー量に変換した、歩行者の加速度の重力方向成分が得られ、このデータ (d) に基づいて、歩行ピッチや歩数の算出が可能となります。
圧電型 (ピエゾ抵抗) メソッドでは圧電エレメントを用いて加速度を測定します。圧電エレメントは加速度が加わり変形することで電流を発生させます。発生した電流を加速度として測定します。
加速度センサーのその他情報
1. 加速度センサーとジャイロセンサーの違い
加速度センサーと似た性能を持つセンサーの一つが、「ジャイロセンサー」です。ここでは、加速度センサーとジャイロセンサーの違いについて解説していきます。
加速度センサーはその名のとおり、「加速度」を測定するためのセンサーです。一方で、ジャイロセンサーは「角速度」を測定するためのセンサーなので、両者は検出対象となる物理量が異なるということになります。
ジャイロセンサーではコリオリ力を利用して対象物の向きや姿勢を検知し、それを電気信号として出力します。物体の傾きを測る場合などに利用されており、カーナビや手振れ補正付きデジタルカメラ、スマートフォンやゲーム機など、様々な電子機器に搭載されています。
また、加速度センサーとジャイロセンサーを組み合わせることで、物体の運動の様子をより詳しく測定することも可能です。たとえば、車載用品の一つであるカーナビにも両センサーを組み合わせ複合式センサーの技術が利用されています。
これによって、ジャイロセンサーでは自動車の向きを、加速度センサーによって移動距離をすることができ、トンネル内のような電波が届きにくい場所でも現在地を正確に表示することが可能となります。
2. 加速度センサーの使い方
加速度センサーを用いて目的のアプリケーションを実現させるためには、必要な測定範囲または周波数帯域などを事前に確認しておく必要があります。たとえば、ゲーム機のコントローラーに加速度センサーを搭載する場合、使用者がコントローラーを振って操作することを想定したうえで、必要な測定範囲以上のもの使用しなくてはなりません。
測定対象に適した加速度センサーが決まったら、実際にセンサーを配線し、測定プログラムを作成していきます。この時に重要となるのが、「パラメータ設定」です。パラメータ設定ではセンサーの感度や0g(重力加速度が0の時)出力レベルなどを変更できます。これらを適切に設定しなければ、目的のアプリケーションを実現させることは困難になります。
参考文献
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/sensors/sensor_what5
https://www.cqpub.co.jp/DWM/CONTENTS/0126/dwm012600970.pdf
https://ednjapan.com/edn/articles/1205/16/news110.html