産業用レンズとは
産業用レンズとは、工場内の生産ラインでの監視や検査、防犯カメラなど、業務用途のカメラに使われるレンズです。
産業用レンズの構造は、民生機器である一眼レフカメラなどのレンズと基本的には同じですが、使用用途に応じてより高分解能であったり、低歪みであったりなど、求められる性能に特化した設計がなされています。また、産業用レンズは、民生カメラレンズと同じようにレンズと撮影エレメントを持つカメラをつなぐレンズマウントという構造を持ちます。
レンズマウントにはさまざまな種類がありますが、アダプタを介すると互換性を持たせることが可能です。しかし、各々のレンズマウントの間に互換性がないものもあるため注意が必要です。
産業用レンズの使用用途
産業用レンズは、産業用カメラとセットで使われます。産業用カメラはさまざまな工業製品の生産ラインで、幅広く用いられています。具体的には、半導体やIC、医療や製薬、農業や食品、自動車、金属加工、樹脂、セラミックス、フィルム製品の生産工場などの分野です。
私たちの身の回りでは、監視カメラ、防犯カメラに使われているレンズも産業用レンズです。自動車にも運転を支援したり自動運転のためにカメラが搭載されており、これらのカメラに使われているレンズも、産業用レンズと呼ぶことができます。
産業用レンズの原理
産業用レンズは、民生用カメラのレンズと同じであり、複数の凸レンズと凹レンズが組み合わされています。産業用レンズは特に低歪み性が求められることが多く、画像の周辺でも映像が歪まないための設計がなされているのが特徴です。また、テレセントリック光学系という設計が用いられたレンズもあります。
テレセントリック光学系とは、ピントを変化させても、対象物の大きさが変わらないレンズ構成のことです。たとえば、前面が凸レンズの場合、レンズに照射された光はレンズ後面に向かって収束するように光路が変化していきます。光路上に複数のレンズを設置することで光路の補正を行い、レンズ後面から他の部品に向かう光を平行光にしたレンズはテレセントリックレンズと呼ばれます。
民生用の一眼カメラ用のレンズでは、絞りとピントリングという機構が搭載されているのが一般的です。しかし、産業用レンズでは、絞りやピントは固定されたものもあります。これは使用環境が固定されているので、使われる条件に合わせて最適な設計を行なっているからです。なお、絞りの仕組みは人間の瞳孔と同様の原理であり、光路径の大きさを変えることでレンズから入ってくる光の量を調整しています。
また、これらの機能を備えていることで被写界深度と呼ばれるピントが合う範囲の調整を行うこともできます。ピントリングとは、被写体がレンズを通して撮影エレメント上で結像させるためにレンズ群を可動させるための機能です。
産業用レンズの種類
産業用レンズには、民生用レンズと同様に広角レンズ・標準レンズ・望遠レンズ、単焦点レンズ、ズームレンズなどがあります。そのほか、ラインセンサー用レンズという、非常に細長い領域に特化したレンズやテレセントリックレンズも、産業用レンズの1つです。
微小撮影用レンズ・対角・円周魚眼レンズという区分もあります。微小撮影用レンズは極端に近い距離にある被写体を映せるため、小さな物体の微細な損傷などを確認する検査に使用されます。
対角・円周魚眼レンズは、広角レンズよりもさらに広い範囲を映すことが可能です。取得された画像が大きくゆがんでしまう欠点がありますが、車載カメラなどの極端な広範囲を撮影する必要がある場合に利用されます。
参考文献
https://www.toshiba-teli.co.jp/products/industrial/info/t/t0004_Lens_Terminology_j.htm
https://www.tochigi-nikon.co.jp/products/lens/index.htm
https://www.canon-its.co.jp/column/detail/img_column01_04.html