アイドラーとは
アイドラー (英: idler) とは、チェーンやベルトによる動力伝達に使用する円筒形の回転体です。
機械要素部品の1つで、英語で「遊んでいるもの」を意味します。チェーンやベルトを案内して伸びを吸収し、張力を適切に維持するなどの目的で使用されます。
アイドラーは軸受を有し、チェーンやベルトに従動して回転可能です。外径形状はチェーン用がスプロケットの歯車状であり、Ⅴベルト用がⅤ溝のプーリー、タイミングベルト用が歯車状、平ベルト用がローラー状、丸ベルト用が円形溝プーリーで作られています。
アイドラーをベルトの歯面側に設置する場合を内側、逆側に設置する場合を外側と呼びます。材料には樹脂製やスチール製、ステンレス製などを使用可能です。
アイドラーの使用用途
アイドラーはチェーン駆動やベルト駆動を継続的に維持させたり、チェーンやベルトの経路位置を変えるために使用されます。チェーンやベルトの張力維持は必須であり、アイドラーによりチェーンやベルトの経路に干渉物を回避させます。チェーンやベルトの巻き付け角を大きくして駆動力を増加させる用途にも利用可能です。
ワーク搬送コンベア同士のつなぎ目に平ベルト従動ローラータイプを使用すると搬送ワークがスムースに通過できます。
アイドラーは、包装機械、食品機械、工作機械、搬送装置などの産業機械、自動車や産業用のエンジン、農業機械などの駆動部に広く使用されています。
アイドラーの原理
アイドラーの役割はチェーンやベルトの張力維持、経路の変更、駆動力の向上、振動・ばたつきの防止、ベルトのスリップ防止、ベルトレイアウトのコンパクト化などです。そのためアイドラーを適切な位置に設置して可変にします。
張力の維持にはアイドラーの位置を手動で移動させる方法と自動で一定の張力を与える方法があります。前者はねじを使ってアイドラーの位置を変える張力調整部品が市販されているため、比較的容易に対処可能です。後者はばね力または油圧により一定の張力を与え、長時間調整が不要です。
ベルトの張りを適正にするには、まず2つの軸の中心間隔と両方のプーリのピッチ円直径から幾何学的にベルト長 (スパン) を計算します。次にスパンからベルトメーカの実験データを使ってスパン中央の適正たわみ量を求めます。そしてスパン、ベルトの総長さ、初張力からスパン中央のたわみ荷重を求め、スパン中央に与えた際に適正たわみ量となるように張りを調整可能です。
アイドラーの構造
アイドラーは内部に転がり軸受が収納されているため、固定軸に対して自由に回転可能です。ベルトの形状に応じた外径形状になっており、アイドラーの外径をベルトの背面に滑らせて用いる際にはアイドラーの外径は平たい面になっています。
アイドラーの配置にはチェーンやベルトの内側または外側に設置する場合があります。外側の場合にはベルトではアイドラーが平面ローラータイプ、チェーンではスプロケットタイプです。
アイドラーの選び方
アイドラーを配置する際の固定法はベルトの動力伝達部品の張力調整機能を付加するかで異なります。張力調整機能が必要な場合にはねじなどの駆動機構でアイドラーを外部から動かす必要がありますが、張力調整機能が必要ない場合には固定機能だけで問題ありません。ベアリングの穴を使ってアイドラーを固定します。
アイドラーには軸受が必要ですが、チェーンやベルトの張力と巻き付け角から軸受にかかるラジアル荷重を求め、適切な寿命が得られる軸受を選定します。使用環境を考慮して軸受のシールやグリースを選び、アライメント公差の検討が必要です。
また両シールタイプのアイドラーは両面のシールによりゴミの侵入を防ぎ、木工機械などの粉塵がある悪環境でも使用可能です。さらに平ベルト従動ローラータイプのアイドラーはワーク搬送コンベアのつなぎ目に適しており、ベルト厚さよりフランジ高さが低く、搬送ワークをローラー上まで通せます。
参考文献
https://www.imao.co.jp/introduce/idle.html
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md05/g0077.html
http://www.mekatoro.net/digianaecatalog/orien-sougou/book/orien-sougou-P1724.pdf