アセテートとは
アセテートとは、酢酸セルロースを原料とする人造繊維です。
その歴史は古く、第一次世界大戦後にイギリスで生産が始まり、1950年代に日本での生産がスタートしました。現在、世界で生産されている繊維のうち、アセテートの生産量は約1%と非常に少ないですが、その優れた特徴からスペシャリティ繊維として様々な用途において重宝されています。
高純度の木材パルプ材を原料としたセルロースに酢酸を化学的に結合することで酢酸セルロースにした後、繊維として使用します。アセテートは、天然パルプ材の植物繊維 (セルロース) をもとに合成した繊維を製造するため「半合成繊維」の一種です。
原料が植物由来なので、環境に優しいグリーンな繊維でもあります。
アセテートの使用用途
アセテートは独特の風合いや光沢があり、繊維製品として様々な場面で使用されています。具体的には、服の生地 (和装着物) 、小物類、ネクタイ、カーテン、生地裏地、傘、シャツ等に使われることが多いです。
また、フォーマルウェア等のビジネスウェアやセーター等のカジュアルウェア、レインコート、インテリア関係のファッション雑貨にも使用されています。プリーツ性を活かした婦人服や、独特の光沢感を活かした女性用のチェックブラウス、アセテート生地の光沢を活かしたスカジャン等にも使用されています。
高級衣料アウターとしても人気の素材です。さらに、タバコのフィルターにも用いられています。
アセテートの特徴
アセテートの特徴を長所と短所に分けて解説します。
長所
アセテートの見た目は、絹のように輝く優雅な光沢感を有しているのが特徴です。また、染色性、発色性も優れており、染料によって美しく鮮やかに染め上げることができます。
触感については、高純度のパルプを原料としているため、毛織物のようにふっくらとした肌に優しい自然な質感と風合いを兼ね備えていることや、適度な弾力性を有することが長所として挙げられます。また、絹やレーヨン、キュプラと比べて、着心地の良い軽い生地をつくることも可能です。
保温性が高いこと、適度な吸湿性、放湿性、速乾性があり寸法安定性が高いことも特徴です。生地には弾力もあり、シワが寄りにくく、スカートや背広によく使用されています。逆に、アイロン等で熱を加えると生地が柔らかくなり、冷ますとその形状を維持 (プリーツ性) があるため、スカートの折りひだ作りなどにも利用されています。
短所
アセテートの最も大きい欠点として、繊維の機械的強度の低さが挙げられます。実際には、強度の高いポリエステル繊維などと混繊し、強度を補うことも多いです。
アセテートは、生地自体が摩擦や熱に弱いので、アイロンをかける場合は高温をかけ続けて熱変形しないよう、注意を要します。また、水を吸った状態で熱が与えられると失透現象が起きて繊維の色が濁ることもあるので、スチームによる処理や仕上げには向いていません。
アセテートのカラー生地は、自動車の排気ガス (NOX) や石油ストーブの排ガスに当たると、染料の分子が分解することで変色する危険性があるため、取り扱いに注意が必要です。その他、マニキュアの除光液やシンナーはアセテート繊維を溶かす可能性があります。アルカリ洗剤もアセテート特有の光沢を消失させてしまうので、洗剤の選択には注意が必要です。
アセテートの種類
アセテートは、ジアセテートとトリアセテートに分類され、このうちジアセテートのことを一般にアセテートと呼んでいます。
1. ジアセテート
ジアセテートは、セルロース中に含まれる水酸基のうち74%以上、 92%未満が酢酸化されています。
2. トリアセテート
トリアセテートは、水酸基の92%以上が酢酸化されています。アセテートとトリアセテートに大きな差はありませんが、トリアセテートはアセテートよりもセルロースと反応して結合する酢酸の数が多いため、吸湿性や吸水性が若干低く、またやや硬い質感になります。
参考文献
https://kawariito.com/material-basic-knowledge
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fiber/66/3/66_3_P_98/_pdf