アクリル

アクリルとは

アクリルとは、アクリル系モノマーを重合して作られる高分子の1種です。

一般的にアクリルというと、アクリル樹脂もしくはアクリル繊維を指します。どちらもアクリルという名前ですが、それぞれの原料となるモノマーは異なるものが用いられています。

アクリルの使用用途

1. アクリル樹脂

アクリル樹脂は1934年頃に工業化され、プラスチックの原料として今日まで様々な場所で使用されています。当初の使用用途は戦闘機のキャノピーと呼ばれる窓部分など軍事利用でした。

しかし、現在では無機ガラスの代替用途、照明器具や建材、電子部品、産業資材、アクリル樹脂塗料など多岐に渡ります。

2. アクリル繊維

アクリル繊維は1950年ごろに開発されました。ウールに似た性質を持つように開発されており、主な使用用途はセーターなどの衣料品です。その他、ニット製品、毛糸、毛布、カーペットなどに使用されています。

これら以外にも工業分野にて、ろ過装置に使用するろ材や、アスベストの代替として建築分野でも使用しています。

アクリルの性質

1. アクリル樹脂

アクリル樹脂という名前から、アクリル酸のみを重合した高分子のことを指すように思われますが、実際はメタクリル酸エステル、またはアクリル酸エステルと呼ばれる有機化合物を重合することで製造されています。製造されたアクリル樹脂は、加工が容易で耐衝撃性、耐久性、耐熱性が高いです。中でも一番の特徴は高い透明性で、同様に高透明なポリカーボネートと共に有機ガラスとも呼ばれます。

そのため、パネル状にしたアクリル樹脂が、水族館の水槽などに使用されています。デメリットとして、表面が傷つきやすいことが挙げられます。アクリル樹脂は塗料の基材としても使用されます。アクリル樹脂が使用されたアクリル樹脂塗料は、他の樹脂を基材にした塗料と比較して、高い光沢性と弾力性があるが耐久性が低いという特徴をもち、価格帯は最も安価です。

2. アクリル繊維

アクリル繊維もアクリル樹脂と同様に原料はアクリル酸ではなく、アクリロニトリルと呼ばれる有機化合物を主原料として、他の有機化合物と重合し、繊維状に製造されたものです。

アクリル繊維の特徴は、軽さ、保温性、染色性が良いことで、ウールと比較すると価格も安く、アクリル繊維で作った衣類は型崩れしにくいのがメリットです。反面、吸湿性が低いため、衣類にした際にはムレやすく、静電気が発生しやすいことがデメリットです。

アクリル繊維はアクリロニトリルが質量比で85%以上含まれるものに使われる呼称で、似た名前でアクリル系繊維というものがあります。アクリル系繊維は、アクリロニトリルが質量比35%以上85%未満のものを呼びます。残りの成分は塩化ビニリデンや塩化ビニルが用いられているため、難燃性に優れており、難燃製品に用いられます。

ただし、2020年11月にJIS用語、2022年1月以降は家庭用品品質表示法、繊維製製品品質表示規定において、アクリル系繊維の名称は、モダクリル繊維に変更されることになりました。今後はアクリル系繊維の名称は見られなくなっていく可能性が高いです。

アクリルのその他情報

1. アクリル樹脂の製造方法

アクリル樹脂は多くの場合は、原料モノマーを懸濁重合と呼ばれる重合方法で重合したのち、高分子成分から水を除去することでアクリル樹脂の製品になります。塗料用途で使用する場合は、溶液重合や乳化重合と呼ばれる重合方法で重合後、高分子を溶解または分散させている溶媒を除去させずに、そのまま塗料の原料として使用します。

2. アクリル繊維の製造方法

アクリル繊維の原料のアクリロニトリルは、プロピレンを金属酸化物触媒の存在下、アンモニアと酸素を作用させ生産されます。このアクリロニトリルを有機溶媒に溶解させた溶液を、細いノズルから凝固液の中に繊維状に押出します。繊維状のアクリロニトリルは凝固液により固まることで、アクリル繊維になります。

参考文献
https://i-maker.jp/blog/acrylic-5309.html#i-4
https://www.orizuru.co.jp/media/technical_information/synthesis_technology/a31

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