アラミドとは
アラミドとは、芳香族ポリアミドからなる高性能繊維の総称です。
1965年にアメリカのデュポンにより開発されました。パラまたはメタフェニルジアミンとフタル酸ジアミンの重縮合により合成されます。同じく合成繊維として知られている脂肪族ポリアミドであるナイロンに比べ、芳香環を主鎖に持つ剛直な分子骨格であることから、高い強度と弾性率を有しています。1974年にナイロンと区別する目的でアラミドという一般名称が与えられました。
アラミド繊維は分子構造の違いにより、パラ系とメタ系に分類されます。前者は機械的強度、耐切創性、振動減衰性に優れており、後者は耐熱性、難燃性、耐薬品性に優れています。
アラミドの使用用途
アラミド繊維はパラ系、メタ系にそれぞれ特徴があり、その特徴を活かした用途で応用されています。
1. パラ系アラミド繊維
パラ系アラミド繊維は、産業用途から航空宇宙分野に至るまで、非常に幅広い分野で使われています。産業分野の用途例として、光ファイバー用のテンションメンバーやロープが挙げられます。これは同重量の鋼鉄と比較して約5倍もの強度を持ちながら、伸びにくいという性質を活かした用途です。
また、摩擦に強いという特性を利用して、タイヤやブレーキパッドなど長期間の摩耗に耐える必要のある用途にも用いられています。さらに、耐切創性があることから作業用手袋や防弾チョッキ用など安全保護用品用の繊維としても使われています。一方、航空宇宙分野では、耐熱性を活かしパラシュート用の部材としても採用されています。
2. メタ系アラミド繊維
メタ系アラミド繊維はパラ系とは異なり、強度に秀でているわけではありません。汎用のポリエステルと同等の強度、比重、風合いを有しながらも、難燃性能を示す酸素指数が高く、400℃まで溶融も分解しないという特長を持っています。消防服や航空機シートなど、耐熱性と難燃性が求められる用途に応用されています。
アラミドの性質
1. パラ系アラミド繊維
パラ系アラミド繊維の強度や高い弾性率は、高分子内の結合の強さに由来します。パラ系は全トランス型であるため、直線性と平面性が高い分子骨格です。
パラ系アラミド樹脂を濃硫酸に溶解させて延伸させると、まず分子鎖同士が水素結合し、それが連鎖していくことで平面状のプレートが形成されます。さらに、プレート同士が分子間力で凝集することで円柱状の繊維材が構成されます。このように、特殊な分子鎖の配列と高次構造を形成することで高強度、高弾性率をはじめとする数々の特性が発現します。
2. メタ系アラミド繊維
メタ系アラミド繊維は分子がジグザグ状に配列するため、水素結合や分子間力はパラ系と比較して弱く、ポリエステルやナイロン繊維と同等の強度を持ちます。他方で、構造が比較的柔軟であり、高温化ではベンゼン環が密集した構造をとるため分解、引火しにくく良好な耐熱性を示します。また、酸やアルカリに対する耐薬品性にも優れています。
アラミドのその他情報
アラミドと炭素繊維の違い
同じく有機系で高強度を持つ繊維として、炭素繊維が知られています。炭素繊維とはカーボンファイバーとも呼ばれ、圧倒的な軽量性と強度を持つためスポーツ用品から航空宇宙分野まで用途が広がっている材料です。
しかしながら、導電性を持つため電磁波が透過せず、かつ耐摩耗性が低いという欠点があります。さらに、加工に非常に手間がかかるためコストも高くなってしまいます。そのため、スマートフォンの背面パネルなどには、絶縁性や耐摩耗性のあるアラミド繊維を複合したプラスチックが用いられる場合が多いです。
参考文献
https://www.td-net.co.jp/kevlar/about/
https://www.jcfa.gr.jp/about_kasen/katsuyaku/02.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fiber/56/8/56_8_P_241/_pdf/-char/ja
https://www.tcichemicals.com/JP/ja/support-download/chemistry-clip/2008-07
https://i-maker.jp/blog/nylon-polyamide-5418.html