ポリスチレンとは
ポリスチレンとは、原油やナフサから化学合成されるスチレンを重合して得られる高分子化合物です。
ポリスチロール、スチロール樹脂といった別名があります。ポリスチレンが初めて工業化されたのは1930年台で、場所はドイツです。その後アメリカでも工業化されましたが、第二次世界大戦の真っ只中であったため、しばらくの間生産は停滞していました。
本格的な生産が始まったのは戦後で、日本でも1957年にスチレンモノマーを輸入し始めたことにより、生産されるようになりました。
ポリスチレンの使用用途
ポリスチレンは、家電製品内部のプラスチック部分、食品の包装材料、レターケース、パソコンのハウジング、CDケース、ボールペンの軸など透明かつ剛性が高いことが必要なものや、液晶ディスプレイの拡散板や導光板など、汎用性の高いプラスチックであるため、使用用途は多岐にわたります。
発泡剤を添加した発泡ポリスチレンは、成形時に簡単に発泡させることが可能で、カップ麺容器やスーパーなどのお弁当・惣菜容器、建材用の断熱材など断熱性を活かしたものに使用されています。
ポリスチレンの種類
ポリスチレンの種類としては、一般用ポリスチレン、発泡ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、2軸延伸ポリスチレンシートがあります。
1. 一般用ポリスチレン
一般用ポリスチレンは、スチレンのみを原料とするもので価格が安く、バランスの取れた物性で多くの用途に用いられています。透明性が優れており、寸法精度がよく、容易に着色もできます。原料がスチレンのみであることからリサイクルしやすい材料です。
反面、耐熱温度は60~80℃程度と他のプラスチック樹脂と比べて熱に弱く、耐衝撃性が低い、酸、アルカリに対する耐性は高いが、油類に対する耐油性が低いといった弱点があります。
2. 発泡ポリスチレン
発泡ポリスチレンは、最終製品を成形する工程での加熱により発泡して膨らむ材料です。発泡スチロールという別名のほうが一般的です。ポリスチレンを製造する際に原料中に発泡剤を入れておくことで、成形時の熱で発泡します。発泡体であるため断熱性が高くかつ軽量であるため、日用品から建材まで幅広く使用されています。
3. 耐衝撃性ポリスチレン
耐衝撃性ポリスチレンは、ポリスチレンの重合の際にポリブタジエンなどのゴム成分を添加することにより、一般用ポリスチレンの耐衝撃性を改良したものです。耐衝撃性は一般用ポリスチレンの5~10倍に向上する反面、剛性や透明性が低くなるなどのデメリットがあります。成形性、耐薬品性は一般用ポリスチレンと同等です。
この耐衝撃性ポリスチレンと一般用ポリスチレンをブレンドしたものは、これらの中間的な性質を示すようになり、多種多様なグレードが存在します。
4. 二軸延伸ポリスチレンシート
二軸延伸ポリスチレンシートは、押出成形されたポリスチレンシートをさらに縦横の二軸方向に延伸して得られるシートです。二軸延伸することで分子が配向して、透明性、耐薬品性を損なうことなく、強度、耐衝撃性が向上します。主に、スーパーやコンビニなどで販売されているお弁当用の透明のフタなどの食品包装材料として使用されています。
ポリスチレンのその他情報
ポリスチレンの製造方法
ポリスチレンの工業的な製造方法として、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合が挙げられます。なお、原料であるスチレンは、ベンゼンとエチレンの加熱合成により得られます。
1. 塊状重合法
スチレンモノマーに重合開始剤を添加してそのまま加熱し重合させる方法です。
2. 溶液重合法
スチレンモノマーを反応不活性な有機溶媒に溶解させ、重合開始剤を添加して加熱し重合させる方法です。
3. 乳化重合法
スチレンモノマー、界面活性剤、水溶性重合開始剤、水を混合し、水中に乳化させた状態で加熱し重合する方法です。
4. 懸濁重合法
スチレンモノマー、懸濁安定剤、重合開始剤、水を混合し、水中に懸濁分散させた状態で加熱し重合する方法です。
参考文献
https://www.jsia.jp/features/index.html
https://www.jushiplastic.com/polystyrene