EPROMとは
EPROMとは、「Erasable Programmable Read Only Memory」の略で、データの書き込み・消去が一定回数できる半導体メモリです。
書き込んだデータは、電源を切っても内容が保持される不揮発性メモリです。EPROMは、強い紫外線を一定時間照射することで、メモリ内の全てのデータを消去します。
そのため、データの一部を残して消去することはできません。また、長期間太陽光や蛍光灯に当て続けると、データが消去されてしまうので注意が必要です。データの書き換え回数が数十回程度であったり、データ消去に一定時間かかったりすることから、近年では電気を使って消去するEEPROM (Electrically Erasable PROM) やフラッシュメモリに置き換わりつつあります。
EPROMの使用用途
EPROMは、プログラムやデータを書き込まれてコンピュータ制御機器に搭載されています。何度もデータを消去し書き込むことが可能ですが、データを消去するためには紫外線の照射装置にかける必要があります。
電子機器に組み込んだ場合、データの書き換えの都度、電子機器からEPROMを取り外して紫外線照射装置にかけなければなりません。そのため、電気的にデータの書き換えが可能なEEPROMなどが主流になりつつあります。
EPROMの構造
EPROMでは、1ビットのデータは1個のトランジスタに保持されます。この様にデータを保持するトランジスタのことを、メモリセルトランジスタと呼びます。
EPROMのメモリセルのトランジスタは、ゲート酸化膜中に電気的に絶縁されたフローティングゲート (浮遊ゲート) が埋め込まれています。
浮遊ゲートの上には、制御ゲートと呼ばれる電極が配置されていて、データの読み書きに使用されるものです。EPROMは、このメモリセルが碁盤目状に配置されています。
EPROMの原理
EPROMの原理を3つの観点から解説します。
1. 書き込みの原理
メモリセルトランジスタの制御ゲートに高い電圧を加えることで、メモリセルトランジスタのチャネル中のソースとドレイン間に流れる電子は、高いエネルギーを獲得します。エネルギーを獲得した電子の一部は、ゲート酸化膜を飛び越えて浮遊ゲートに注入されて、浮遊ゲートを負電荷にします。浮遊ゲートが負電荷になると、データが記録されたことになります。
2. 読み出しの原理
トランジスタが機能するために制御ゲートにかける電圧を、スレッショルド電圧と呼びます。データが書き込まれて浮遊ゲートが負電荷になっているメモリセルトランジスタは、データが書き込まれていないメモリセルトランジスタより、制御ゲートに高いスレッショルド電圧を加えなければ動作しません。
データが書き込まれていないメモリセルトランジスタのスレッショルド電圧と、データが書き込まれているメモリセルトランジスタのスレッショルド電圧の中間の電圧を読み出し電圧と呼びます。読み出し電圧を加えてメモリセルトランジスタがオンするかオフするかで、データの有無を判断することが可能です。
3. 消去の原理
紫外線を照射することで浮遊ゲート内の電子は、高エネルギー状態になります。高エネルギーになった電子は、ゲート酸化膜を飛び越えて基板と制御ゲートに放出されます。電子を放出した浮遊ゲートは、電気的に中性になりメモリセルトランジスタのスレッショルド電圧が初期値に戻ります。
これがメモリセルトランジスタのデータが消去される原理です。EPROMのデータ消去が全データ一括消去なのは、紫外線の照射を特定のメモリセルトランジスタに絞ることが困難なためです。
EPROMのその他情報
EPROMのメモリ容量と型番
EPROMのメモリ容量は、2キロビット (256バイト)~32メガビット (4メガバイト) で、型番から確認できます。EPROMの型番は、2732、2764のように27から始まります。型番の27以降の数字がメモリ容量です。
例えば、2732は32キロビットの容量を持つことを、2764は64キロビットの容量を持つことを表しています。また、27C32、27C64の様に型番の27の後にCが入っているものは、メモリセルトランジスタがCMOS構造であることを示します。
参考文献
https://www.atmarkit.co.jp/icd/root/87/5785787.html
http://www.shmj.or.jp/museum2010/exhibi751.htm
https://shizenkarasuzon.hatenablog.com/entry/2018/12/09/233440